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つきながせんぱい。

わたしが呼んだ名前は空気に溶けて消えた。
押し倒された勢いのまま、わけがわからず先輩を見上げる。
無理やり繋がれた左手が熱を帯びていく。意外と力強い手だ。
そうこうしている間に先輩の顔がだんだん近づいてきて、慌ててもう一度名前を呼ぶ。


「月永先輩……!」


熱でもあるんだろうか。
いつも「うっちゅー」だとか「妄想が」「霊感(インスピレーション)が」とかよくわからないことしか言わないのに、こんな真剣な表情で、しかも押し倒れている状況が理解できない。先輩でも風邪引くの?


「なんだ?」


いつもとは違う低い声で問いかけられて、ますます戸惑う。
なんだ、ってなんだよ!こっちが聞きたいよ。


「あの、近いです」


他にもっと言いたいことはたくさんあったのに、でてきたのはそんな言葉だった。
近くで見ると、やっぱり綺麗な人だなと思った。大人しくしてたら、だけど。


「おれ、名前のことがすきだ。だいすきなんだ」


始まった。いつものことだ。月永先輩はだれにもすぐ「大好きだ」とか「愛してる」っていうから、こういうのは信用してはいけない。状況が状況なだけに騙されてしまいそうだけど。だいたい、さっきまで作曲してたのに、どうして急にこんな、


「なあ、どうしたらいい?」


これは、まずいかもしれない。





17/09/01