「こんなゴリラいらないんだけどぉ?」
瀬名先輩お得意のゴリラ発言に、月永先輩は部屋の中を見回している。
ゴリラなんていないので探さないでください。あ、わたしの方を見た。
「ゴリラ?む、名前はゴリラじゃないぞ!失礼なやつだな!名前はおれの騎士だ!おれのこと守ってくれるんだ〜!な〜?」
同意を求められたので首を傾げておいた。
騎士になったつもりはないし、だからといってゴリラでもないし。守る、とは言った気がする。
「ん〜……うるさくて眠れないんだけど。安眠妨害」
急に部屋の隅っこから声がして、だれかと思ったら凛月だった。
凛月、いつからそこにいたの。さっきまで同じ教室にいたはずだけど。床に寝転がってる姿はもう見慣れてしまった。
「リッツ!寝る子は育つっていうけど、それ以上育ったらおれが怒るぞ!起きろ!」
がるるる、と威嚇しながら月永先輩が声をかけても、凛月は床の上で溶けたアイスみたいになって動こうとしない。たぶんしばらく起き上がらないと思う。昼間もずっと寝てたし。
「耳に響くから静かにしてよ…………名前、こっちに来て」
瀬名先輩の後ろで二人の様子を伺っていると、凛月と目が合った。凛月は最近ずっと機嫌が悪くて、わたしとは話したくないオーラをだしていたのに。久しぶりに名前を呼ばれた気がする。
言われた通り凛月の近くに行くと、指先だけで床に座れと指示される。
なに?
「なんだ?名前はリッツと仲がいいのか?」
月永先輩もわたしに合わせて首を傾げた。
仲が良いってほどでも……
「俺のペットなの」
そう言ってわたしの隣で丸くなる。膝枕を強要されるのかと思って身構えたのに、隣で寝るだけなの?
なんだか猫みたい。これでは凛月のほうがペットだ。
また機嫌を損ねたくないから余計なことは言わないけど。
それはそうとなんで凛月だけ衣装を着ているんだろう。それ、ユニット衣装じゃなかった?
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