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- ナノ -

「月永。今夜は貴様の番だ」


夜になって、敬人の案内で通された部屋は、やけに薄暗かった。
窓から入る月の灯りだけが唯一の光だ。
おかげで、その部屋が昼間に訪れたのと同じ部屋だと気付くまでに、時間がかかる。


「よかった、来てくれた」


彼女はやっぱりベッドの上にいて、レオの顔を見ると嬉しそうにほほ笑んだ。
そこまで彼女に歓迎される理由が思いつかず、レオはどういう顔をしていいかわからない。


「敬人ったら、あなたの名前を聞くと嫌な顔をするの。だから呼んでくれないかと思った」


レオの前を歩く敬人が、ため息をついていた理由がようやくわかった。
彼女には歓迎されていても、他の者はレオのことを快く思っていないのだ。


「最近は全部彼が決めるから。わたしが口だしするのを、嫌ってるのね」
「ここから出られないのか」


色素の薄い彼女は、外に出たら消えてしまう病だ、と言われてもおかしくない。
少女は小さく首を振って、目を伏せる。


「ううん、出られないわけじゃないの。一人では出歩けないけど、敬人と一緒なら大丈夫。たまには外の空気を吸わないと体を壊してしまうから。もちろん心も。壊れるのは、形のあるものだけだと思ってた」


壊れたことがあるのだ。でなければ、真顔でそんなことを口にしない。

レオが次の言葉に迷っていると、屋敷全体に大きな鐘の音が鳴った。
ごぉおん、という足元から振動が伝わってくるような、重くて恐ろしい音だった。


「なんの音だ?」
「これは……あなたとわたしだけの時間が、始まる音」


彼女は目を伏せたままだった。
鐘の音が鳴り終わるまで、しばらくどちらも口を開かなかった。

屋敷全体が静寂に包まれると、少女はすぐに目を開けて、楽しそうに両手を合わせる。とびきりの名案を思い付いたように。


「楽しみにしていたの。今夜はなにもしなくていい。一緒にお話ししましょう?」


楽しそうに笑うのに、彼女の動作はどれも大げさすぎて、本音を読み取ることができない。


「他のやつとは何をしてるんだ?」


興味本位で聞いてみる。敬人の言った「今夜は」という言葉が、引っかかっていた。
彼女も同じ言葉を口にしたから。

今夜がレオなら、昨夜はだれと一緒になにをしていたんだ?


「それは、聞かないで」


彼女から笑顔を奪うのは至極簡単なことだった。
レオが、余計なことを口にしないと決めたのは、そのせいかもしれない。
笑ってほしかったから。