×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「思い出したのね!あなたはわたしの太陽なの!来てくれるのを楽しみにしてた」


ぴょん、とベッドから飛び降りる。
彼女の裸足の足首が頼りなくて、間違って折れてしまわないか不安になった。


「おれは楽しみにしてないぞ。ここはどこなんだ?ケイトってやつが、おれのことを必要だっていうからついてきたのに」
「あなたを必要としたのは、わたしよ」


敬人の名前をだすと、彼女は一目見てわかるほど肩を下げた。
そんな名前は聞くのもうんざり、といった感じだ。


「おまえ面白くないな。話していてもなにも生み出せそうにない」
「月永くんは、面白いわ」
「おれを呼んでどうする気なんだ。ここは」


昨日、レオはここに連れてこられた。
レオが敬人のあとを追ってたどり着いたのは、大きなお屋敷だ。

手入れの行き届いた薔薇園と、澄んだ水がとめどなく溢れる噴水に、眩暈がするような螺旋階段。
建物の中には、どれも同じ形をした扉が、先も見えない廊下に均一に並んでいる。

こんな場所があるなんて、ここに来るまで知らなかった。


「心配しないで。この前もいったけど、あなたには話し相手になってもらいたいの。ここにいると退屈で。みんな同じことしかしないから。でも鳥籠の中に閉じ込められたままじゃ、遠い山の向こうの、海を見ることだってできない。翼はあるのに飛べないなんて、悲しいでしょ」


窓の外に視線をうつした少女は、どう見ても翼なんて持っていなかった。
でもその細い足では、海に行くまでに倒れてしまうだろうな、とレオは思った。


「おれはなにも知らない。おまえに話せるようなことなんて」
「初めて会ったときのようにいろいろ話して聞かせて?それだけでいいの。あなたの面白いと思ったこと、大好きなもの、あなただけに見える世界の全て」


世界のすべてをおれが知っているのか。
歌をうたうみたいに話す子だ。
彼女ならレオの作り出すメロディに、繊細な言の葉を紡ぐことができるかもしれない。


「あなたの見た世界を、わたしの世界にする」


振り返った彼女の瞳は、少し泣きそうだった。