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重い足を動かしてなんとかここまでたどり着いた。

スタジオ。ここにはいい思い出がない。

扉を開けるのさえ億劫なのに、中に入ることを考えたら頭痛がする。それでも扉を開ける選択肢しか残されていない。


「やっと来た!遅い!」


予想通りというかなんというか、瀬名先輩が仁王立ちで出迎えてくれた。これは相当ご立腹である。見たところ部屋の中には先輩しかいない。


「あの」
「言い訳はいいからそこに座って。ほら、早く!」


急かされて反射的に座り込む。むしろ足の力が抜けたというか。もうここから動けない自信がある。このまま石像になりたい。


「だいたいあんた責任感とかないのぉ?急に来なくなったと思ったら、他人事みたいな顔して帰宅しようとするし、礼儀がなってない!仕事を甘く見過ぎ!」


仕事って……わたしは学校に通っているだけだ。確かにもう一人の転校生は毎日走り回って忙しそうだけど。わたしにそんな行動力はないし。
そもそもわたしは学校を辞めるためにここに来ているだけで。


「仕事なんて、する気ないです」
「はあ!?馬鹿なの!?あんたなんのためにここに毎日通ってるわけ?どうせ一人で行くあてもないゴリラやってるんでしょ?だから俺が声かけてやったの!」


先輩が吠えている。
だいたいゴリラやってるってなんだろう。まるでわたしが好んでゴリラになっているみたいな言い方はやめてほしい。わたしのことをゴリラにしたのは瀬名先輩だ。


「ゴリラは先輩しか呼びません」
「あ〜、はいはい、口答えはいいからぁ!……王さまに声かけたんでしょ。ゴリラにしかできないよねぇ、そういうことは」


急に先輩が大人しくなる。

王さまって月永先輩のことだろう。どうしてあの人のことになると、みんな遠い目をするの?
わたしには彼らの憂いを気にする権利なんてないけれど。