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「違う……」


あれでもない、これでもない。
お気に入りの服をいくつか取り出して見たものの、鏡の中の自分が納得しない。
レオくんがデート、なんていうから。変に意識してしまってなかなか決まらないんだ。そもそもデート服なんて持ってないし。

悩んだ末に、嵐くんがこの前着ていたニットが可愛かったので、現役モデルの私服を参考にしてみることにした。落ち着いた色のニットに、膝丈のフレアスカートを合わせる。これならいつもとは違うけど、力を入れすぎてもいない。髪は軽くサイドを編み込む。


「お、お待たせ」


リビングに戻ると、レオくんは手元の書類から顔を上げた。もしかして仕事中だった?


「よし、行くか!はい、手貸して〜?」


いつもの調子で手を差し出してくる。
あまりにも平常モードだったので、ちょっと納得がいかない。こっちの気も知らないで。


「その前になにか言うことないの」


似合ってる、とか、今日はいつもと違うな、とか。レオくんに期待するのもあれだけど。


「なんだ!?なにか謝るようなことしたか?」


わたしの言葉の意味をレオくんはわかってないみたいだった。
むしろまた何か悪いことをしてしまったのかと慌てている。違うんだよ、レオくんは何も悪くない。だからすぐ謝ろうとしないで。


「一応おしゃれとか、したんだけど」


それでもやはり腑に落ちなかったので呟く程度に抑えておく。喧嘩になるのも嫌だから。今日は仲裁に入ってくれるリオがいないし。


「ん?名前はいつもかわいいだろ?あ!ちゃんと言わないとわかんないのか?わかったわかった、今日もかわいいよ☆」


息をするみたいに軽い調子でそんなことを言う。
はあ!?ほんとに思ってるの!?なんか言い慣れてない?余計に腹が立つんだけど!


「行きたいところとか言って!どこにでもつれてくから!」


レオくんはわたしの気持ちなんて知りもしない顔で、自然と手を繋いできた。
まだ心の準備もできてないのに、こういうところは強引だ。


「行きたいところって言われても。特にない」


考えてみたものの、特に思いつかない。
デートだからって、いまさら水族館や動物園に行くような関係でもないし、レオくんを連れておしゃれな喫茶店に行くのもなんだか違う気がする。

そもそもわたしに付き合わせてレオくんの時間を無駄にするのがもったいない。外へでかけたら絶対作曲したくなるだろうから、仕事のインスピレーションが湧きそうなところ……美術館……は万が一のとき迷惑かけそうだな……いや、そんな心配するわたしのほうが間違ってるんだ。レオくんのこと子ども扱いしすぎ。集中すると周りが見えなくなっちゃうのは、仕方ないことだと思う。今日はメモもペンも持ってるし、いつ宇宙と交信し始めても大丈夫だよ。


「どうした、名前?」
「レオくんの好きなところにつれてって。仕事もあるし霊感が湧いたほうがいいでしょ?どこがいい?」


わたしが考えていても拉致があかないので、ここは本人に聞いたほうが早い。
家の中で手を繋いでいるのもなんだか恥ずかしいから、早くでかけたいな。


「む。今日は仕事のことは忘れる!霊感も湧かない!せっかく名前と二人きりだからな、名前のことだけ考えたいんだ!」


いろいろと気を使ってあげたのに、レオくんは頬を膨らませて怒っていた。
レオくんにはレオくんの考えがあるらしい。天才の考えることはよくわからない。

でもそういうことなら仕方ないね。
どこか、行きたいところか……。
特別な場所ではないけど、休みの日に買い物に行きたいなとは思ってたんだ。


「じゃあ普通に買い物してもいい?」


主に生活必需品だけど。一人だと近所のスーパーに行くことしかできないし。レオくんの手が空いている今日がチャンス!あと、リオの勉強机とかベッドも下見したいな。


「いいよ☆久しぶりだな〜!リオが産まれる前はよく荷物持ちした!」


ただの買い物か、って思われたらどうしようかと心配だったものの、レオくんは意外にもすごく嬉しそうだった。
荷物持ちだけでこんなに喜ぶとは思ってなかったけど。