「ゆきだ!ママ!ゆきがふってる!」
朝起きた途端、リオがぴょんぴょん飛び跳ねて教えてくれた。そうだね、降ってるね。去年は降らなかったんだっけ?リオは雪を見るの初めてじゃないはずだけど。いつにもまして元気がある。
「パパー!ゆきだよ!おきておきて!ゆき!すごいから!まっしろだよ!ゆきだるまつくるー!?」
雪でテンションが上がったリオは、まだベッドで寝ているレオくんの元に駆けていった。
「んん……雪〜?降ったのか?」
リオに揺すられて、レオくんは半分寝ぼけている。
「ふってるの!つもってる!ゆきだるまつくるってやくそくしたの!パパちゃんとおぼえてるー??」
リオは真剣だ。なんだか二人のやりとりが可愛くて観察してしまった。
レオくん、寒いけど起きて。朝だよ。
「んー!そうだったな!雪だるま作るか!どれくらいの作る!?」
「リオよりおおきいの!」
「了解!いくぞ〜、リオ!」
「うん!」
そのまま二人で飛び出していく勢いだったので、慌てて服を着替えさせる。
リオには何枚も重ね着させて、帽子とマフラーも巻いてあげた。
レオくんは、わたしが去年編んであげたマフラーを引っ張り出してきて巻いている。それまだあったんだ。すぐ失くすかと思った。
「雪だー!」
「ゆきゆき!!」
「風邪ひかないようにね〜」
外に飛び出していった芸術家二人を玄関で見送ってわたしは家に入る。
二人がいない間に朝の仕事を終わらせますか。
一時間後。
「名前、寒い……」
「ママ、リオしんじゃうかも……」
二人してぶるぶる震えながら帰ってきた。飛び出していったときとの温度差に少し笑ってしまう。
あまりにも寒そうなので何か温かいものでも作ってあげるか。
「大丈夫?ココア飲む?」
「ココア!ココアのむー!」
「おれもおれも!」
ほんとに幼稚園児が二人いるみたいだな。かわいいからいいけど。
「リオ、手冷たいな?あっためてやるから両手だして!」
「うん!」
わたしがココアを作っている間、レオくんはリオの手を両手で包んで温めてあげていた。
「はい、ココア」
「ありがとう、名前!だいすきだ☆」
「ママ、だいすき☆」
返答が同じで思わず笑ってしまう。
リオはココアで元気を取り戻したようだけど、レオくんは遊び疲れたのか、笑顔にいつもの元気がなかった。
「レオくんも寒そうだね。風邪ひいてない?」
「大丈夫だ!でも寒いから名前にぎゅーってしてもらいたい!なんてな!」
わはは、と力なく笑ったレオくんの頬や鼻が赤くて、なんとなく、いつもは絶対しないんだけど自然な流れで体が動いていた。
「ぎゅー」
「!?!?」
後ろから抱きしめてあげる。
ほんとだ、冷たい。わたしも一緒に外で遊びたかったな。雪だるま作りたかったし、リオと一緒に思い出作りしたい。
ちょっと後悔していると、腕の中のレオくんが動かないことに気づいた。
不思議に思って様子を窺うと、マグカップを手にしたまま目を丸くして固まっている。
「なにその顔」
「だ、だって名前がぎゅってするから!心臓止まるかと思ったぞ!」
自分から言ったんでしょ。ぎゅーってしてって。
「ママ!リオもぎゅってして!ぎゅーって!パパだけずるい!」
隣からリオが飛びついてくる。はいはい、リオもぎゅーってしてあげるね。
今日ぐらいは寒さを理由に距離を縮められるかな。
朝ごはんを食べたら、今度は三人で雪だるま作ろうね。
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