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あれから、わたしの世界は少しずつ広くなっていった。すれ違うだけだった人に、だんだん名前が追加されていく。何度も助けてもらって、厳しく叱ってくれる人もいた。


「おれも名前の名前は覚えたぞ!どうだ!偉いだろ!」


ふふん、と胸を張って笑う。


「あなたはどうしてここにいるんですか」
「ん〜?どうしてだろうな?まあ、戻って来たわけではないんだけどさ。完全に消える前に、はっきりさせておきたいことがあるだろ?」


はっきり。
わたしは学校を辞めるために通って、レポートを書いて、できれば周りと変な衝突は避けて、清々しい気持ちで学校から去りたい。

この人も、何か清算したいことがあってここにいるということ?
わたしのことが必要だっていうのは、どういう意味だったんだろう。


「ああ、そうだ!この前会ったときは思い出せなかったけど、おれのことは月永先輩って呼んで!そんな感じの名前だった!……いや、月永レオだ。名前には、ちゃんと言った方がいいな」


軽かった言葉が少しずつ重みを帯びていく。
月永先輩。
初めて会ったとき、自分のことがわからないと言っていたけど、ちゃんと思い出せたんだ。

わたしもだんだん自分のことがわかってきた。自分のことを知ると、世界が広がる。
それは周りとの繋がりで少しずつ広がっていく。


「おまえのことが必要なんだ」


月永先輩が呟く。
その言葉が風に乗ってわたしの耳に届く。


「もうすぐ迎えに来るから!おれが迎えに行ってやりたいけど、それは難しいかもしれない!でも、できたら行くよ。おれが行けなくても必ず迎えが来る。全部終わって落ち着いたらおれの言うことを聞いて。約束な」


勝手に約束なんてされても困る。
強引なところは王様っぽいかもしれない。

月永先輩は一体何をするつもりなんだろう。凛月たちも忙しいみたいだし、わたしの知らないところで、この学校では何かが起こっている。


「だからもう少しここにいて」


今日はよく引き止められるな。

――待って。
――ここにいて。

そもそも「学校を辞めます」といったあのときに、すでに引き止められていた。