小さなオムライスを五個。大きなオムライスを一個。
……大きいといっても普通サイズだから、わたしのは。幼稚園児のに比べたら大きいだけで。
「できたよ〜」
結局静かに待っていてはくれなかった五人を呼ぶ。
途中で一人失踪してたけど、数えたら五人いたので無事戻ってきたみたいだ。よかった。
一日目から行方不明者がでたとか、笑えない。
「名前!ケチャップでなまえかいて!」
「いいよ」
オムライスを見てオレンジ髪の子がわたしの服を引っ張る。
わあ、こういうところは幼稚園児だ!かわいい!
初めてちょっと癒された。
「おれはレオ!」
「れおくん、っと」
オムライスがちっちゃいせいで書くのに手こずったけど、平仮名が並ぶとかわいいな。
わたしが書いた名前を見て、レオくんは首を傾げた。
「なんかちがうぞ!」
え?違った?
れおって聞こえたんだけど。
「つかさのなまえもかいてください!」
「はい、つかさくん」
赤い髪の男の子はつかさくん。
つ、か、さ……って、三文字はきついな。
最初に勢いよく書きすぎて「さ」の居場所がなくなったけど、適当にごまかしておく。
そんなにキラキラした瞳で見つめられると、緊張するよ。
「おれはね、りつっていうの。りっちゃんでいいよ〜」
「りつくん」
ここに来てからずっと寝ることに全力を尽くしている子だ。
寝る子は育つっていうけど、それにしても寝すぎ。
いまもオムライスを前にして、ふぁあ、と欠伸をしている。
「アタシのことはおねえちゃんでいいわァ♪」
金髪の子はそう言って上手にウインクした。
お姉ちゃんって聞こえたけど、それを除けば普通にしっかりした子だった。
「名前は?」
聞いてみると、彼はちょっと俯いて小さく呟く。
「……あらし」
男の子らしい素敵な名前だ。
「かっこいい名前だね。あらしくん」
「なる、でいいから」
あらしくんは、ちょっと困ったように視線をそらした。
なるくんって呼んだほうがいいのかな。
もしくは彼の望み通りお姉ちゃん?
いやでもお姉ちゃんっていうより、妹だし、妹というより弟なんだけど。
「君は?」
最後に残ったくせ毛の男の子に問いかける。
彼は他の子たちみたいに「名前を書いて」とは言ってこなかった。
「おれはそんなこどもみたいなことしなくていいからねぇ」
子供だよね、とは言わないでおこう。
「君の名前が知りたいんだけどな?わたしも自分の名前書くよ〜」
彼に言った通り、自分のオムライスにも名前を書く。
うん、上出来。小さいころはわたしもお母さんに書いてもらったなあ。あの人、こういうの好きだから。
わたしがオムライスとにらめっこしていると、彼はむすっとしたまま口を開いた。
「いずみ」
「ありがとう、いずみくんね」
仲良くなるのに時間がかかりそうだけど、悪い子ではないみたい。
第一関門、みんなの名前を覚える!はクリアしたね。
「よし、全員分できた!座って!いただきます、するよー!」
一日目の最初からいろいろあったものの、わたしが手を合わせるとみんな慌てて机に向かってくれた。小人みたいでかわいいなあ。
「いただきます」
「いただきます!」
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