それは突然だった。
「あの、鳴上くん」
手を引かれて廊下を歩く。
これは一体、どういうことだろう。
どこへ連れていかれるの?
ぐー、とわたしのお腹がむなしく鳴る。
お昼を食べていないのが、こんなところに響くなんて。
すぐに帰れると思っていたわたしが悪かった。
放課後になって、いつもどおり静かに帰宅しようとしたわたしは、同じクラスの鳴上くんに捕まった。
「ごめんなさいね。少しだけアタシに付き合って?」
「……はい」
おとなしくついていくしかなさそうだ。
*
鳴上くんについていってたどり着いたのはあのスタジオだった。
正直言って、ここにはいい思い出がない。
「まあまあ、あがっていって?名字ちゃんには少しだけお願いがあるの」
鳴上くんはさっきから“少し”を連用してるけど、わたしには少しの余裕もなかったりする。
一歩間違えれば空腹のせいで吐きそうだ。……吐くものも残ってないか。
「用があるのは泉ちゃんなんだけどね♪」
そう言って通された部屋の真ん中には、見覚えのある先輩。
「ひっ」
思わず小さな悲鳴を漏らして鳴上くんの背中に隠れる。
男の子は背が高くてよかった……
「あんたさぁ、俺の顔見てそんな態度取るなんていい度胸だよねぇ?」
こわすぎた。
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