今日はリオが幼稚園に行ったのでレオくんと二人きりだ。
レオくんは昨日から自分の部屋に引きこもっていたのに、リオが幼稚園に行くと急に機材をリビングに運んできて一階で仕事を始めた。おかげで掃除機もかけられないし、テレビもつけられないし、わたしの仕事は止まってしまったんだけど。
邪魔はしたくないのでそっとしておこう。
暇なのでレオくんの横顔を見つめる。
お仕事中のレオくんは完全に自分の世界に夢中で、真剣な表情が控えめに言ってもかっこいい。
静かにしてると普通に美人さんだし。
あ、寝ぐせ発見。
昨日からずっとお仕事してるからなあ。
「なんだ?」
急にレオくんが顔を上げたのでわたしは大げさなくらい飛び上がった。
「へ!?いや、なにも、べつに」
しどろもどろになる。
作曲に夢中だったからこっちに気づくとは思ってなかった。
レオくんはヘッドホンを外し、首を横に振って髪を整えている。
お風呂上がりの子犬みたいでかわいい。
じゃなくて。
「うそだ!そんなに見られると気になるだろ!」
「見てないよ!!」
むきになって声を荒げてしまう。
確かに見てた。
見てたなんてレベルじゃないくらい、凝視してた。
「リオが最近、名前の心配ばっかりするんだけど、おまえ体調悪いのか?」
レオくんが躊躇いがちに聞いてくる。
リオの最近の口癖である「お腹痛くない?」がレオくんの耳にも入っていたようだ。
これは何か勘違いしているなあ、と思ったので、すぐに否定する。
「ううん。健康だよ」
「ほんとに?実は重い病気だったとかやめろよ!どこか悪いところがあるならちゃんと言って!」
ある意味、重い病気みたいなのにかかってるんだけど。
レオくんのことが気になる、って言ったらどんな反応が返ってくるんだろう。
リオが弟が欲しいんだって、って言ってみたら?
いや、言えない。言えるわけないし。
それってつまりわたしが誘ってるようなものじゃないか!
「わ、わかった。何かあったらちゃんと言うから。レオくんも隠さないでね」
既に隠し事をしているわたしが言えることじゃないとわかっていても、やっぱり言い出せなかった。
リオ、ごめんね、弟は無理かも。
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