お名前変換



「一人ずつ名前を」


6人は一列に並び、女性に向けられている銃口に不安を覚えながらも名乗った。

「サイ・アーガイル」

「カズイ・バスカーク」

「トール・ケーニヒ」

「ミリアリア・ハウ」

「キラ・ヤマト」


それぞれの緊張した様子に、アインは少し呆れながら続けた。軍人が簡単に中立国の民間人を簡単に殺していいはずがない。もちろん、こちらが抵抗すればやむを得ないかもしれないが、こちらが抵抗しなければそれなりの安全は保証されるはずだ。


「グリフェプタンの操縦者、アイン・アルスター」

「あなた…網膜認証は…!?指紋認証と網膜認証はまだ製造者しかインプットされていないはずじゃ…」


目を見開く女性に、アインは肩をすくめてみせた。


「あれの開発…OS部分や各種制御システムをくみ上げたのはあたしです」

「そう、だったのね…私はマリュー・ラミアス。地球連合軍の将校です。申し訳ないけど、あなたたちをこのまま解散させるわけにはいかなくなりました」

「ええ!?」

「まぁ、軍の機密を見たわけだし、当然っちゃ当然ですね」

「ものわかりが良い子がいて助かるわ。しかるべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで、私と行動を共にしていただかざるをえません。」

「そんな!」

「冗談じゃねえよ!」

「いや、冗談じゃないってば…」


呆れながらもついつっこみを入れれば、サイにチラリと見られる。突き刺さる視線はとても痛い。こちらの言っていることの方が正論であるはずなのに、だ。


「したがってもらいます」


有無を言わさないラミアスの言葉に、6人は今度こそ固まった。サイが搾り出すように言う。


「僕たちはヘリオポリスの民間人ですよ?中立です!」

「軍とか何とかそんなの関係ないんです!」

「そうだよ!」

「だいたいなんで地球軍がヘリオポリスに居るわけさ。そっからしておかしいじゃねーかよ」

「そうだよ!だからこんなことになったんだろ!?」


アインは彼らの反論を止めることは諦め、ミリアリアと共に一線後ろで待つことにした。どうせ、この女性についていかなくてはならないのだから。



バン

バン



二発、上空に向けて撃った後、マリューの銃は銃口を少年たちを狙う。ミリアリアはアインの背中に隠れるように一歩下がった。アインもどうにか平静を装っているが、それでも銃声は怖い。まして耐性のないミリアリアなら隠れたくなるのもしょうがないだろう


「黙りなさい。…何も知らない子供が…中立だと、関係ないと言ってさえいれば、今でもまだ無関係でいられる。まさか本当にそう思っているわけじゃないでしょう?」


マリューの目は切実だった。恐怖もあるが、こちらも目を離せない。


「ここに、地球軍の重要機密がある。あなたたちはそれを見た。それがいまのあなたたちの現実です。」


ごくり、と自分がつばを飲み込む音が鼓膜に響いた。何万人のステージで歌うより、緊張しているのがわかる。


「そんな乱暴な…」

「乱暴でも何でも!」


サイの呟きは彼女を逆撫でしたようだ。


「戦争をしているんです!プラントと地球。コーディネーターとナチュラル。あなたがたの外の世界はね…」


マリューの言った言葉に、アインの脳内に一抹の不安がよぎる。いくら黒い髪と瞳を持っているとはいえども、自分の能力は友人をはるかに凌ぐことがよくある。














自分は本当にナチュラルか?





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