【午前2時のマイガール】


その日の嶺二は久々に帰りが遅くなった。
あがりが天辺超えていて、今から帰ったら丑三つ時だ。いつもならどんなに遅くてもご飯を作って一緒に食べる早苗も、流石に寝ているだろう。


(ご飯買って帰ろうかなー)


足取りが若干重たいのは疲れているからだけではない。世間的には公表していなくても早苗が恋人であることに変わりはなく、やっぱりその恋人と寝る前に話したり出来ないのはすごく寂しい。

嶺二は電気の着いていない自宅、というよりも一緒の部屋にしてもらった事務所寮に帰宅した。やっぱり寝てるなと思いながらキッチンの電気をつけると、




お仕事お疲れ様です。先に寝ちゃってごめんね!
ご飯ちんして食べて下さい。
何かあったら起こしていいからねー 早苗




ラップのかかったお皿と、クリームイエローのメモ用紙。付き合い始めてから初めて先に休ませることになったけれど、なんだかこれはこれでキュンとするものがあった。

特別に綺麗で整っているというわけではない早苗の文字が、本人のように元気いっぱいに労ってくれている気がした。


「ボクのサナちゃんは本当に可愛いなーもぅ。」


口にして更に恥ずかしくなることって本当にあるんだなと、嶺二は思わず顔を覆った。時間帯のせいもあってかあまり宜しくない想像が頭のなかを駆け巡る。

とりあえずシャワーを浴びて落ち着いて食べ、そしてしっかり休もうと思ったのだが、バスルームから出てきた時にはちょっとした"栄養不足"状態のようだった。

無性に彼女を抱きとめておきたくて、嶺二は乾きかけの髪の毛をそのまま、早苗のベッドにそっと忍び込んだ。後ろから抱え込むように抱きつくと、早苗は少しだけ身動ぎしてまた眠りについたようだ。


「サナちゃん、起きてくれたりする?」

「……ん…」


寝ぼけて返事はしてくれたものの、さっぱり目を覚ます気配が無い。嶺二は仕方ないと無理に理由をつけると、早苗の耳たぶをぱくっと甘咬みした。


「んにゃ!?」

「あ、サナちゃんモーニンッ!」

「嶺二…おかえりなさい……じゃなくて!永遠にグッナイしてもらいましょうか?」


頬を染めてそう言う早苗は、決して嶺二の腕から逃げたりはしなかった。むしろその格好のまま眠ってやろうというような勢いだ。


「あれ、もしかして寝ちゃう?寝ちゃうの?嶺ちゃん泣いちゃうよ?」

「んもー、分かったから、ご飯とお風呂は?」

「シャワー浴びてきたよ」

「…ご飯は?」

「今から食べるよ?」


言ってさらにきつく抱きしめると、ようやく嶺二の言いたいことがしっかりと伝わったらしい。早苗は今度こそ本気で腕の中から出ていこうとして、けれど男女の筋力差では敵うはずもなく。


「離して嶺二!あなた明日も撮影でしょ!?」

「えぇ〜サナちゃんボクのこと嫌いなの?」

「好きだけど、それとこれとは話が別でしょう……」


すっかり目が覚めた様子の早苗をひとしきりからかって楽しむと、嶺二はまた首筋を舐めて楽しむことにした。

わざとペロペロと音を立てるとくすぐったいのと気持ち良いのとで、早苗が必死に声をこらえて身を捩るのだ。その様子が堪らなく可愛くて、嶺二はつい手をパジャマの中へと伸ばした。


「ちょっと嶺二!!」

「いいじゃん、サナちゃんのけちー」

「けちじゃない!嶺ちゃんのえっち!」

「…っ………」

「え、う、うそゴメン、そんなに傷ついた!?」

「ううん……サナちゃんが可愛くって…呼吸困難に…」

「リアルにハァハァしないでください」


そんな風にじゃれつきながら、午前二時になる頃に、そのうち2人は睡魔に誘われるがままに眠りに落ちるのだった。







【午前二時のマイガール】




「あ、嶺二起きて!!8時!!」

「うっそーん!?」




END




2013/01/30

嶺ちゃんは一回恋人になったらずーっと好き好き言ってそうなイメージ。
でも本気の子ほどなかなか近づかせてくれないみたいな?




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