拾八
うんざりとする三蔵を他所に、八戒は村の人々から宿を確保したのだった。
「三蔵。
お仕事頑張ってね?」
「……何で面倒な事を」
「あら、でもそうしなきゃ宿がないんだから、しっかり頑張ってね?」
「チッ…
後で膝枕くらいしやがれ」
「はいはい」
汚いモノを見る目をする悟空と悟浄に、八戒はヒソヒソと話し掛けた。
「(仕方ないでしょう、利用できる物は利用しないと。
悟空と悟浄は粗野な言動は隠して下さいね)」
「…本物の三蔵一行なのに」
「詐欺集団ぽいのはなんでだろーな…」
村の奥には、村人達が言う通り信仰に厚いのを思わせる立派な寺院があった。
三蔵は金冠を被り、久方ぶりのお経を唱える。
それを村人達の背後から4人は見守っていた。
「………
本物っぽーーーい」
「本物ですから。」
「やだ悟浄と悟空。
口が開きっぱなしよ?
それにしても三蔵のお経はいつ聞いても…」
「ノロケかよ?
いいよなー三蔵サマはよォ」
「ち、違うってば!」
座って手を合わせる村人達は、とても嬉しそうに三蔵のお経を聞いていた。
「いやこれは有り難い…」
「ああ、何せ最近…この界隈は不吉な事が続いとるからなァ」
「不吉な事…?」
「あ、ええ……
ここしばらくの間に、何人もの村人が行方不明になってまして」
「それは―――
立て続けにですか?」
「いや、多い時でもふた月に一人程度ですけどね」
「大人から子供まで……それでももう10人はくだりませんよ」
「やっぱりホラ、丘の上の『鳥男』の仕業じゃないかねぇ」
「鳥男?」
次々に村人達は行方不明の村人がいる事などを教えてくれた。
神隠しや誘拐などの噂もあるらしいが、一番は丘の上の『鳥男』が怪しいのだと言う。
「鳥男ってまさか、あの…」
「かもしれねえなァ」
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