……

………













桜が舞い散る天上界――


観世音菩薩は桜の木に寄りかかり、酒をたしなんでいた。












「……………
今日はやけに忙しいな」













桜が風に靡き
酒に数枚の花弁が乗る





そんな観世音菩薩の元に慌てた二郎神が走って来る













「―――観世音菩薩
至急本館の方にお戻り下さい!
ナタク太子が……!!」














意思を失ったままのナタク太子が、忽然と姿を消した―――














……

………













――人間界











「……おい
ほんっとーに、この道しかなかったんだろうな?」


「何度も言ってるじゃありませんか。
ここを越えないと西へのルートを逸れるんですって」


「文句言わずに頑張って登らなきゃ。
ホラ、頑張って」


「惷香。
オメーはいいよな!
その糸で手繰りゃいいんだからよォ」


「いーじゃん。
たまには山登りで汗かくのもさ」


「……こいつは山登りじゃねぇ
ロッククライミングってんだよ」


「えーー?三蔵今なんか言ったーー?!」













急激な岩壁を登る三蔵一行。
西に向かう予定のルートに、邪魔となる山があるのだが、超えるにはロッククライミング並に自力でよじ登る必要があったのだ。



皆汗ダラダラになりながら必死に登る中、1人涼しい顔をしているのが惷香。




惷香は金糸を伸ばし、ロープ変わりにしながらゆっくり体内に戻しながら登るので、自動で山を登っている様なもの。

金糸を使うのにも多少ながらも体力や精神を使うが、自力でロッククライミングをするよりは大分ラクだろう。
















「まさかこの先、こーゆー場所ばっか続くんじゃねぇだろうな」


「それはないと思いますけど…
ただでさえ西域は地形の起伏が激しい上に、異変の影響で地図とはかなりかわっちゃってますからね」


「文句ばっか言ってんなよ悟浄〜〜
三蔵と惷香でさえ黙って頑張ってんだからさ」


「〜〜っ
惷香は糸でラクしてやがんだろ!
しかもコイツは黙ってんじゃなくて、息が上がって物も言えねェだけだろーがッ」


「体力も精神も使ってるわよ」







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