六拾四


暗闇の中で声が聞こえた








【離さねェよ】


【掴んだものは もう何ひとつ】













光の中で彼が 笑った――




金禪

あなただったんだ

私を呼んだのは……






待ってたんだよ

ずっと…






ずっと――









ザ――――









雨の中で惷香は腕を抱えて前屈みに倒れていた









「惷香!
大丈夫ですか?!」


「おいッ!
しっかりしてくれっつーの!」









ユラリと空を見上げる様に立ち上がった








「惷香…?」


「大丈夫なのかよッ」







.

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