参拾七


街に戻るまでの間
三蔵は不機嫌な顔のまま妖怪に警戒しているかの様に
左右見回しながら森へと入って行く



惷香も三蔵の後を追うのを必死に
後ろや左右を見ながら足元にある木の根を避けながら先へと進んだ


女が男の歩幅に合う訳もなく
惷香の息も上がり
木に手を付いて息を切らす









「置いて行くぞ」









三蔵はまた袖から煙草を取り出すが
煙草も無くなり
「チッ」と舌打ちすると煙草の包みをクシャっと手で潰した








「す、少し休みませんか?」








惷香が息切れしながら三蔵に言う
三蔵は腕を組み溜息を付く


先程休んだ川沿いで三蔵は腰を下ろした








「5分だ
5分休んだら先へ急ぐぞ」


「ありがとうございます」








惷香も腰を下ろし
手を後ろに付き顔を空へと向けた


抜けるような青空
惷香は大きく息を吸い込んだ



世界が違っても空や自然は同じなんだと実感した









「おい」









三蔵が声を掛ける









「はい?」


「三仏神が俺達に同行を求めたと言う事は
俺達に何か関わりがあるんじゃないのか?」









鋭い






けど
悟空が関係しているかもしれない
とはどうしても三蔵には言えなかった









「いえ……」









言葉が濁る
三蔵の真っ直ぐな視線が痛い…









「隠すと為にならんぞ」


「三仏神様は旅をした方が目的が早く見つかるだろう
けど…1人ではキケンだと仰っていましたけど…」








勿論出まかせだが
今はまだハッキリしていない以上は誤魔化すしかないと思った







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