拾九


「あ、あの!」









惷香が店から出ようとする八戒の後を追いながら声を掛ける

店を出た所で









「はい?」









と八戒は振り返る
すかさず








「あのお金…すみません…それで…」


「あーいいんですよ
困っていた様ですからね
それより…それはどこのお金です?」


「え?あ…
私これで昨日まで使えていたんですけど…」








と惷香は八戒に自分の硬貨と紙幣を見せる








「これは初めて見ますね」


「やはり使えないんですか…」








ガックリと惷香は肩を落とす

当然1文無しになってしまった

飲み物おろか泊まる場所さえない

惷香は混乱に混乱が重なり 眩暈がして来た








「大丈夫ですか?」








八戒が重そうな荷物の間から顔を出して心配そうに覗き込む








「ええ…大丈夫です」


「でも困りましたね
お金がないとなると泊まる事も食べる事も出来ませんし…」


「いえ…野宿でも大丈夫ですよ」


「この辺りは妖怪も出ますからね
危ないですよ?」


「そう…なんですか?」








『危ない』




この1言に惷香は以前会った男を思い出し

両手で腕を掴みブルッと震える







.

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