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悪夢の始まりはこいつの一言


「今から学園祭でやる劇の配役を決めてもらいます。演目は白雪姫に決まったけど、主役やりたいって人が他のクラスで出なかったから、そこのところもよく考えてね」


担任はそれだけ言うと教卓から離れ、クラスの端にある教師用の一際大きな席に座った。そして代わりに前に出てきたのはクラス委員の数人。
これまた、なんで劇なんてめんどうなもんにしたんだろうな。

どの学年も学園祭の出し物を決め始める頃。
中学最後というところがミソなんだろう。やっかいなことに俺たちの学年は特に張り切っていた。
まぁ、本音を言っちまえばそんなことは俺にとってどうでもいい事なんだがな。
ざわめく教室から意識を飛ばして窓の外をぼうっと眺めていると、前の席のマリカが振り返って話しかけてきた。


『今年は真面目にやったら?』

「お前だっていっつも一緒にサボってるくせに」


そう、俺やマリカ、キレネンコにコプチェフなんかはこういった行事には真面目に参加しない方だった。たいていは怒られない程度に役割分担された仕事をこなして後は座って見てるだけ、というパターン。今年もそのはずだった。
だがマリカが急に変な提案をしたことで、俺たちの運命が大きく変わることになるとは、この時点では思ってもみないだろう。


『まだ役とか決まってないんですよね? だったら、最後だからおもしろくなるように男女逆転でやったらどうですか?』


役者と大道具、小道具と歌パートの4チームに別れようとしていたクラス全体の視線がマリカに集まる。
おいおい、男女逆転ったって白雪姫だぞ? そうすると男子が姫で女子が王子? ちょっと無理があるんじゃねぇか?

少しばかり現実を見すぎる俺を他所に、何故か話はどんどん進んでいった。どうやら他の奴らはその意見に賛成らしい。
なんだあいつら……絶対悪ノリしてんだろ。担任も、面白そうねじゃねぇだろ。なんだこのクラス。馬鹿ばっかなのか?


『最後くらい派手にパーっとやろうじゃん』

「は?」


3年間もいたはずのクラスがまさかこんなにもぶっ飛んだところだったとは……と、嫌な発見をしちまってドン引く俺の耳に聞こえてきたのは、マリカの小さな呟き。普段だったら気にも止めないであろうその言葉に、今は何故か嫌な予感がしてならなかった。
そして悪い事に限って当たってしまうということは、人生のお約束だ。


『白雪姫はボリスがいいと思います!』


悪い意味で期待を裏切らなかったマリカの口から出たのは、この上なくとんでもねぇ、そしてなんとも迷惑な指名だった。
まったくあり得ねぇ、なんて奴だ!


「ちょ、ばか! 何言って……」


なんとしてでもめんどう事を回避したかった俺は、急いでマリカの口を塞いだのだが時すでに遅し。
白雪姫役が男子、なんて馬鹿な提案を実行しようとしたはいいが、自分はやりたくないという奴が大半だったようで、皆して安堵のため息をついている。


「ボリスでいいと思う人ー?」


早く決めてしまおうとでも思ったのか、クラス委員の1人がすぐさま皆に言葉ばかりの確認をとる。だがやっぱり意見のある奴はいないらしく、訊かれた瞬間にクラスの全員が無言でさっと手を上げた。
俺はそんな地獄の光景を見て、顔から血の気が引いていくのがわかった。





(ふっボリスもうやるしかないね?)
(マリカてめぇ覚えてろよ)

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