イギリスのキスは世界一らしい。
誰が決めたか知らないけれど、これは結構有名な話となりつつある事実…事実…?
ちなみに俺は2位らしいんだよね。
ところでこれってどうやって決めたんだろう。そいつは俺たちみんなとキスしたとでも?
自称・愛の国を語っている立場としては、なんか納得いかないよね。
俺が2番目?
1位と2位の差ってなんなのよ?

「…とゆーわけで、」
「…どーゆーわけだよ」

俺の目の前にはいつも通り不機嫌な顔をしたイギリスが立ってるわけで。
その距離をさらに縮めようとするとイギリスの眉間の皺がいっそうひどくなるわけで。

「きっ気持ち悪いんだよ、近づくなクソ髭!」

抵抗するイギリスの動きを封じ込めるのは難しいことでもない。
細い腕をつかんで壁に押し付けてしまえば一発なのだ。

「いやあ、世界一のキスとやらがどんなものなのかが気になっちゃってね」

により、と笑う俺と反比例するように、イギリスの顔はどんどんひきつっていく。
そのやわらかい唇に指で触れてみると、彼は「ひっ」と声をもらした。

「死ね変態」

威圧的な目つきも俺には上目づかいにしか見えなくて、俺とイギリスの距離を埋めてしまうのにためらいなんて少しもなかった。

「ふ、…ん」

口内で絡まった瞬間に早速もれたくぐもった声が聴覚から俺の脳を刺激する。
逃げる舌を追いかけて捕まえると、案外向こうも従順に絡めてくるもんだから、こっちもますます気分が高まってきた。

あ、

れ…?

どんどん深くなるキス。
その快感を求めることに夢中で、まさに現在進行中の変化に気づくことができなかった。
気付いた時、すでに遅し。

「んっぁ」

いつの間にか自分が攻められていた。
ゆるゆると足から力が抜けていき、その場に座り込んでしまう。
それでもイギリスは唇を離さない。しつこいほどにねっとりとしたキスだ。

「いっ、ぎ…」

苦しい、と胸を叩くと、ようやく彼は唇を離して緑色の瞳を俺と合わせた。
勝手に出てきた涙でイギリスの顔がぼやけて見える。

「どこで覚えた」

そんなテクニック、と問いただすと、イギリスはさっきとは打って変わっていかにも余裕な様子を見せながら答えた。

「そう、だな…」

再び俺とイギリスの距離が限りなく近くなる。

「最初に教えてくれたのは、」

ちゅ、と唇が触れて、

「おまえだったと思う」

そのまま一気にのみ込まれた。

酸素不足のせいなのか、コイツのテクニックに酔いしれてしまったのか、頭がぼんやりする。
理性なんてとっくに手放していて、感じるままに身体は反応した。

イギリスはどんだけ長いキスが好きなんだろう。
確かに俺はコイツにキスを教えたというか、勝手にコイツが習得したんだろうが、こんなに性格の悪いキスの仕方を教えた覚えはない。

それでも、もっと欲しいとか思っちゃう俺も相当重症なんだろうけど。



下剋上
(かわいい坊ちゃんはどこに?)



(2010/02/26)
テクは紙一重なのでは

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