米誕話(英米)とちょっとリンク
※ちょっと下ネタなので注意



「やあ、久しぶり!」
「……アメリカ?」
 朝っぱらからけたたましく呼び鈴を鳴らした訪問者は、よく見知った相手だった。しかし、彼のほうからわざわざ足を運んでくるとはめずらしい。どういう風の吹き回しだ。まだ完全に覚めていない目をこすりながら、目の前の状況を把握するので精一杯だった。
「なんだい、もしかして寝てたのかい!?もう、フランスはおっさんだなあ」
 せっかくの休日なんだから寝てたっていいじゃないか。大体、これぐらいのことでおっさん呼ばわりされるとは心外だ。それに時差というものを考えてほしい。そっちはフライト中にたっぷり寝てきたんだろうが、こっちは早朝6時をまわったところだ。一体誰が好きで早起きなんかする?
「で、何しに来たんだ?おまえが自分から来るなんて、めずらしいじゃないか」
「うん、まぁ、理由はいろいろあるんだけどね」
「いろいろ?」
「まずは本題からかな」
 アメリカはそう言うと、足元に置いていたキャリーケースの中を漁り始めた。この荷物の量、泊まる気満々だな……。いや、別に歓迎はするんだけどね、せめてアポをとるとか、最低限のことはしてほしいというか……。
「あったあった」
 目当てのものは大きな紙袋だったらしい。アメリカはすっかりぐしゃぐしゃになったそれを取り出すと、俺の目の前に突き付けてきた。
「??」
「あげるよ」
 言われるままに受け取った俺は、おもむろに中身を取り出した。
「……く、ま?」
 何の変哲もないテディベアだった。栗色で、くりくりした目がかわいらしい。
「どうしたの、これ」
「君へのプレゼントに決まってるだろう」
「プレゼント?……ああ!」
 アメリカの言う通り、テディベアの首に巻かれたリボンには“Present for you”の文字が入っていた。
「Bon anniversaire, フランス」
 アメリカのぎこちない発音に思わず吹き出しそうになったのを我慢して、俺は真剣な顔で祝ってくれた彼の頭をぽんぽんと叩いた。
「メルシー、アメリカ」
「……どんなに恥ずかしかったことか」
 このくまを買うのも、それを渡すのも、慣れないフランス語も。アメリカは赤くなった顔を誤魔化すようにしかめっ面を作っていた。
「俺としてはおまえからこんなにちゃんとした形で祝ってもらえたことが驚きだよ」
「まぁ、君には借りがあるからね」
「ああー。うまくいったか?」
 『借り』というのはちょうど10日前の彼自身の誕生日の時のことを言っているのだろう。アメリカは曖昧に笑って見せただけだったが、大方うまくいったに違いない。その証拠にこの10日間、イギリスからは愚痴の電話のひとつもこなかった。
「あの人がでっかいテディベアをくれたんだ。参っちゃたよ。あんな大きなくま抱えて、平気で路上に立ってるんだから」
 それでテディベアか、フランスはなんだか微笑ましい気持ちになって空色の目をしたくまをもう一度見た。
「あと、君のプレゼントもありがとう」
「おっ、使ってくれたか?なかなかいいだろあれ。なんてったって」
「使ってないけどね」
「え?」
「困るよ、ちゃんとサイズまで考えてくれなきゃ」
「っ、え」
 いきなりアメリカが俺との距離を狭めたかと思うと、次の瞬間にはジャスト股間のあたりに違和感が滑る。
「あれ、君のサイズかい?」
「お、おま、どこ触って……!」
 アメリカはけらけらと笑いながら、俺を差し置いて中に入ってきた。
「え、アメリカ、ってちょ、おい」
「だって、あんなもの贈ってくるなんて、どう考えても誘ってるんだろう、君」
 そう言いながら振り返るアメリカの表情は、今までに見たことがないもので。
「今日は君の気が済むまで付き合ってあげるよ」
「―――――!!」
 意地の悪い笑顔でアメリカがひらひらと振っていたのは、まぎれもなく俺が贈ったコンドームのパッケージだった。



Bon anniversaire!
(大人をからかうんじゃありません!)




(2011/07/14)
兄ちゃん誕生日おめでとう!下ネタでごめんね☆

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