*創作奇病をテーマにしたお話。
*報われないお話。暗いです。苦手な方はご注意ください。
*同田貫一人の独白。





庭に向日葵が欲しいと言うから、夏の間中向日葵ばかり探し回っていた気がする。
戦に身を興じていなくても構わないくらいには主のためにと必死になって、気付けば真夏の太陽にあてられた自分の真っ直ぐな想いはひどく大きく育っていた。
それでも俺の想いが叶うことはない。
満足そうに庭を見て微笑む主の隣には、小汚ない俺とは正反対の美しいあいつがいる。
顎を伝う疎ましい汗をそのままに、集めた向日葵を庭へと丁寧に植え替えながら、俺は二人並んで腰掛けるその様を遠目に眺めるだけだった。
いっそ向日葵にでもなりたかったなぁと、刀から顕現した身でそんな馬鹿なことを思った報いだろうか。

俺の体はその日からぼろぼろと崩れていった。

初めは見えない胸とか、背中とか、そんなところだったのに、最近首や手足にまで綻びが広がっている。
とうとう取り繕うことも難しくなってきて、俺は一人、向日葵畑にいることが多くなった。

真夏の高い太陽も、そろそろ穏やかでいる時間が長くなってきた。
つい先日まであんなに咲き誇っていた向日葵なのに、今ではぐったりと頭を垂れている。
あんなに必死で集めたのになぁ。
大きな向日葵の一つを撫でるもなんだか前がよく見えなくて、無意識に右目を撫でた。
あるはずの感触がそこになく、既に右目の周りが崩れ落ちてしまっていることに気付く。
空洞になったそこを確かめる自身の右手も殆んど形を成していない。
俺は一人でため息をつき、そのまま向日葵畑に寝転んだ。

太陽が恋しい。
この夏が終わる頃にはきっと、俺の姿形はなくなってしまっているだろう。 
もう少し生きてみたい気もしたが、叶わぬ恋にそろそろ愛想が尽きてきたから、このまま向日葵と共に朽ちるのもいいかもしれない。

「柄にもねぇこと、するもんじゃねぇなぁ」

頭を垂れた向日葵が仰向けに寝転ぶ俺を覗き込んでいる。
人間に恋した報いか、隣のあいつを妬んだ罰か、向日葵などになりたいと願った罪か。
ぼろりと、体が崩れる音がした。
もしかしたら、向日葵が俺の願いを叶えてくれたのかもしれない。
夏の終わりに共に朽ちようと、そういうことなのだとしたらこんな終わり方も寂しくないと、そう思えた。





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『向日葵病』






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