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「さっきね、優姫を見たんだ。ドレス着てて可愛かった」

横で何も言わないで私の話を聞いていない素振りをする零だったけれど、息を吐きだして私を睨む。それがどうした、と言わんばかりの彼に小さく笑って、素直じゃないね。なんて言い返して、私は歩き出した。

「おい」

「先に中に入ってる」

建物の中から聞こえてくるのは華麗な音楽と人間たちに笑う声に、たくさんのヴァンパイアの気配を感じた。感じ悪い、でも私もその中の一人だと思うと何も言えない。こちらを見てくるヴァンパイアの目線を無視して、一番奥の隅っこで壁にもたれた。華やかな舞踏祭、よく理事長さんもこんなこと考えるな。優姫と踊りたがりそう。

コツン、と足音が近づくと同時に嫌な気配を感じた。玖蘭枢、目の前に立っている玖蘭枢は笑顔を浮かべると、口を動かした。様々なヴァンパイアの目線がこちらを見ているのがわかる。どうして私に近づくの、やめてよ。

「君は踊らないの?」

「はい、優姫はもうすぐきますよ」

くすり、と笑った玖蘭枢に目を合わせずに瞳を細める。本当に、嫌だ。この人を見ると、何かが疼いてくる。

「・・・君を変えた純血種のこと、聞きたい?」

はっと顔を上げると、愉快そうな顔をしている玖蘭枢に、眉を寄せた。まるで、全部この人に操られているようだ。彼のゲーム上に立たされているみたいで、本当に気分が悪い。指先を伸ばした彼に目を見開く、そしてその指先は私の首元に触れて、ひんやりとした気持ち悪い感覚を感じた。


「誰かに君の血を捧げれば、わかるよ」


本当に嫌いだ、この人は。ふざけるな、と言ってやりたいのを抑えて、何も言わないまま私は彼を睨んだ。すっと手が離れると玖蘭枢は小さく笑って、私に背を向けた。









知りたいのならば

   

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