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「・・・睨まないでよ」

「・・・・・・今度、命令が下ったときは俺も一緒にいく」

一瞬なんで?と口を開きかけたが零の視線に何も言えなくなった。黙って頷くと、零は息を吐き出した。

「・・・じゃあ、夜の見回りに行こうか」

零とは途中まで一緒に行って、後は分かれて見回る。これも日常茶飯事のことになってしまった。ゆっくりと歩みながら月を見上げた。そして疼き始める、あの感覚に顔を歪ませる。

「・・・・・・早い」

まただ、ハンターの術式の刺青を刻み込んだばかりなのに、疼いてくる乾き。どうして、私は・・・あの女性のヴァンパイアみたいになってしまうのだろうか、あの人のように人間を喰らって、理性が保てないでいて

「・・・嫌だ、」

人間を殺すことも、理性を保てなくなることも、嫌だ。自分がなんなのかわからないから、余計に嫌になる。本当の自分はどっちなだったんだろうか、わからなくなってしまう。


――人間だった自分と


――ヴァンパイアの私


どっちが本物であったのだろうか、怖いな。いつか飲まれてしまう、いつか・・・

だからこそ、


「・・・早く、死ねればいいのに」

「物騒なことをいうのね」

後ろから感じた気配に、思わず背筋が凍りついた。感じたことのあるような、玖蘭枢に似たような気配。振り返るとそこには見ない顔のナイトクラスの服を身にまとった女の子のヴァンパイア。

「・・・・・・、」

懐に入っている双剣に手をかけようとしたが、それをやめて、彼女を見つめれば。ふっと笑顔を浮かべた彼女。ゆっくりと近づいて、伸ばされた指先が首元に触れる。

「・・・ふふ、貴方もあの子と同じ」

「・・・誰ですか?」

「ああ、ごめんなさい。紅まり亜と申します。ナイトクラスに編入してきました」

そういえば理事長さんがそんなことを言っていたような・・・朝に言われたから眠くてよく覚えていなかった。この人が・・・本当に?普通のヴァンパイアの気配とはまるっきり違う。まるで・・・

「貴方は・・・」

「鋭いのね、」

それでも答えは言わず、にこりと笑う。紅まり亜に、眉を寄せた。彼女はきっと、普通のヴァンパイアではない、でも純血種とは違う・・・何かが、ひっかかる。

「貴方・・・乾いているのね、かわいそうに・・・このままではいずれ堕ちてしまう」

全部彼女にはお見通しのようだった。小さく息を吸い込んで瞬きして彼女を見つめると、紅まり亜の雰囲気が一瞬変わる。重い、重い威圧感。

「貴方を変えた純血種の血を飲めば、貴方は堕ちなくて済むのよ・・・?」

「!」

なに、それ。

「・・・・・・知らなかったの?ふふ、教えてあげましょうか?貴方を変えた、ヴァンパイアのこと」

あの時の彼。鮮明に記憶に残っている美しい彼の姿、












教えてあげましょうか・・・?

   

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