1/2 月が夜空に浮かぶ中、風紀委員は学園内を歩いていた。これはディクラスの夜歩きを探すためだという。度々、こっそりナイトクラスをみにいことする子達がいるらしい。 「眠い、NO NAME?」 「ううん、夜は全然眠くないんだ」 「あ・・・そ、っか。ごめん」 「気にしないで、優姫」 優姫は私がヴァンパイアになったことを知っている。そのせいか、優姫の表情はなにか抱え込むようなものを秘めていて、私になにか言いたげなように、いつも私を見る。 「あのね、NO NAME・・・もし、」 「優姫」 優姫の言いたいことは、なんとなくわかっている。彼女の浮かべる表情の訳も、私のことを思ってくれていることも、すごくわかっている。だからこそ、私は彼女にはその先を言わせてはいけない。零が教えてくれた、後悔をしてはいけないのだ。 「大丈夫だよ」 笑顔を浮かべれば、優姫は少し不安げに、眉を寄せる。 「NO NAMEの笑顔、私すごく苦しくなる・・・」 無理しているように見える。そう言った優姫の言葉に少し驚く。自分でもそんなことはわからなかった。本当の笑い方なんて知らない。本当の自分なんて知らない。 「そう、かな」 「うん・・・」 「それでも、いいの・・・いいんだ、優姫」 自分がわからなくても、後悔だけはしたくないと思った。零の後悔を思い知りたくないだけかもしれないけれど、私は知っていた。時々する血臭の香りに、その香りが目の前にいる、優姫のものだということも。その血を喰らっているのは零だということも。彼の後悔は、どのくらい痛いんだろう。再び小さく笑った瞬間に、優姫に飛びつかれる。ぎゅうと抱きしめられれば、初めて抱きしめられた時を思い出した。変わらない、暖かさ。 「・・・NO NAME、なにかあったらちゃんと言ってね」 「うん・・・、ありがとう」 すごく暖かくて、嬉しいのにね。 こうやって零に優姫は接しているのだろうか、だったら私たちは本当に幸せ者なんだろうけれど、それは苦痛に等しい 優姫、貴方は優しすぎて、残酷だ。 その優しさは余計に私たちを苦しめる。 早く、離れて優姫 その優しさに、優姫の体から香る香りに 酔ってしまいそうだ [しおりを挟む] |