聖夜に君と手を繋いで kissをして 街は雪が降り、 小さな光がいくつも集まり人々の視界に美しく映る。 携帯の画面を見れば、12/25 11:40の表示。 もうすぐクリスマスも終わっちゃう。 と、自分の足元を見た。 今日の為に買ったブーツ、コート、マフラー、ワンピース、もこもこのぼうし。 ネイルだって新しくして、髪もしっかりセットして、メイクもいつもの数倍以上丁寧にした。 ―――それなのに無駄になっちゃうのかな。 そんなことを考えていれば自然と出てくるため息はもう何回目、いや何十回目だろう。 この極寒の中、道行くカップルを眺めてはうつむいた。 「お待たせ」の声を聴いて振り向けば余計うつむいて。 なんども見た携帯の画面でさえ憎たらしく感じる。 「まだかなあ。」 マフラーに顔をうずめるようにして呟く。 刺さるような寒さの中、こうして4時間以上待った。 約束はPM.08:00。 一向に現れない彼を待ってもう4時間以上なのだ。 「死んじゃうよ…。」 ぽそりとつぶやくと、ジワリと目頭が熱くなった。 泣いちゃだめだ、メイク落ちちゃう。 あのバカうさぎ。許さない。 目の前にあるカフェに入ろうとしたけど、どうしても足は進まなくて。 ここにいて待っていたいよと、体が言うのだ。 あのカップルたちみたいに手を繋いで、キスをして、抱き合って。 此処でしたいんだ。 2人が出会った場所で…。 ―――2年前のクリスマス。 あたしは今日と同じようにここで待っていた。 今となってはもう過去の人を。 その時かけられた声に顔を上げれば、オレンジ頭の男が立っていて、その人が今の彼氏なんだ。 『なんかオレ達ずっとここで待ってるな。』 なんて笑いながら言うから、思わず笑っちゃって。 『バカみたいだね。』 あの時はまだお互い幼くて。 そこのカフェでお茶なんかしちゃって。 でも待っている人はこなかった。 来たのかもしれない。そして、カフェで楽しそうに他の人と笑っているあたしをみて愛想を尽かしたのだろう。 もうそれ以来一切連絡も取れないのだ。 あの日からちょうど2年。 はじめてあなたとキスをした日からちょうど2年。 また、繰り返してしまうのだろうか。 じくじくと痛む心に、涙があふれ出し、瞳から零れ落ちた。 泣いちゃだめだと言い聞かせれば言い聞かせるほどぽろぽろと涙がこぼれ、止まることを知らない。 「ラビぃ…。」 目の前がぐらぐらと涙で左右に揺れる。 ぽろぽろとコートを濡らす涙。 「みお…?」 「らっ…。」 名前を呼ばれて、うれしくて、振り向いた先に、心臓が止まったかと思った。 「…ユウ…?」 それは今待っている人ではなく、2年前待っていたあの人だった。 「みおか…?」 「………。」 目を見開いたまま彼を見つめた。 ふと涙は止まっている。 まるで時が止まったかのように、あたしはユウを見つめた。 「ど…して…。」 やっと出てきた言葉に、ユウは返した。 「…待ってたんだよ。お前を。」 その言葉聞いて、止まっていた涙がまた零れ始めた。 今彼は、待っていた、といった。 「2年前のあの日から、お前だけを探してた。」 「そんな…の…。」 「あの日から、お前を忘れられなかった。」 「…勝手なこといわないでよ…。」 「あぁ。」 しばらく沈黙が続く。 「なあ、またお前、誰か待ってるのか?」 沈黙を打ち破ったのはユウだった。 そういって、一歩ずつ、ゆっくりとあたしに近づくユウ。 あたしの一歩手前まで来ると、その手であたしの涙をぬぐおうとした。 ―――パシンッ 軽快な音が響く。 「……。」 気が付いたら手が勝手に動いていて、これは許せていない証拠なのだろうか。 「…触ら…ないで。」 「……わるい。」 「…あの日、あたしがどれだけここで待っていたか、知っていて、待ってるなんて言ったの?」 声が震えてしまう。 涙がこぼれてしまう。 ああ、こんなところ見られたくないのに。 「あの日あたしがどんな思いであなたを待っていたか…っわかってるの…っ!?」 「……。」 「わかりもしないくせにっ…待ってたなんて言わないでよ…っ!!!」 「……悪かった。」 その声を聴いてハッとした。 こんなことが言いたかったわけじゃない。 本当はあなたを愛していたこと。 それでも月日と共にあなたへの愛は消えて行ってしまったこと。 今はほかの人のことをとても大切に愛していること。 「も…ぅ…行ってよ…。」 「…あぁ。悪かった。」 ユウは後ろを振り返り、眠らない街の人波の中へ消えていく。 ああ、もう二度と、あなたに合うことはないんだ。 もう二度と、あなたを愛することはないんだ。 今もアドレスを消せていないあたしを、ラビは愛してるって言ってくれたんだよ。 ねえ、今も、0.01%だけ好きでいてもいい? だめだよね。 あたしはラビを愛すって決めたんだよ。 ねえ、あなたは今好きな人がいるの? 【アドレス帳を一件、削除しますか?】 【はい】 【メモリーを消去しました。】 こんなにあっさりと、あなたは消えるんだね。 「みお!!!」 その声に振り向けば、愛おしい彼が走ってきた。 「…っラビっ!!」 その胸に思い切り飛び込み、抱き着いた。 「ごめんな、すっげー待たせちまったな。」 「…っううん、ごめんね…っ。ごめんねっ…。」 「…?みお?泣いてんのか?」 「なんでもないから…っ、ラビっ、ごめんねっ…」 「……みお?」 「ごめんね…っ」 あたしの頭を優しく撫でるラビ。 あたしはこの温もりを求めていたんだよね。 この腕の中にいたいと願っていたんだよね。 「なあみお、泣かないで、こっち見て?」 「っ…ん…。」 あたしは涙をぬぐい、少し上を、ラビの顔を見上げる。 ラビは優しく微笑むと、ポケットから赤いリボンのついた手のひらサイズの小さな箱を取り出した。 「みお、結婚しようさ。」 「…っあ…あたし…でいいの…?」 突然の言葉に驚き、声がうまく出ない。 止めたはずの涙がまた流れて。 「お前だから結婚しよっつってんだろ?」 「うっ…ラビぃ…っ」 「あーもう、泣くなよ。」 はははと笑ってあたしの頬に触れるラビ。 「うん…。…うん、あたしでよければ…ずっとそばにいさせてください…。」 「ありがと、みお。」 ラビは微笑むと、小箱から指輪を取り出した。 それをあたしの薬指にはめ、そこにキスをした。 「愛してるさ。」 「あたしも…っ、愛してる。」 2人でおでこを合わせて笑いあったクリスマス。 時刻は12/25 PM.11:59。 繋いだ手は暖かくて、触れた唇は冷たくて。 それでも薬指にある感触は確かで。 サンタさん、人は何かを犠牲にしないと、何かを手に入れることはできないのですね。 (来年も、white Christmasを願って。) ******************************************** atogaki 企画では初のChristmas小説です。 こうなるはずじゃあなかった(笑) 神田との話をこれで、結ばれるって話だったんだけど なぜかこの話にくわえられしかもたたかれてるよ神田様…。 ごめんね神田様…(苦笑) クリスマスにプロポーズ。 きゅんきゅんします。 2012/12/14 ←Back |