自棄にはっきりと見える世界から逃げ出したくて、咄嗟に眼鏡を取った。彼女はそれを了承の意味と解釈した様だ。
不明瞭な視界に映った輪郭は、にきび一つない白く綺麗な肌で。瞼の二重の線は刻み込まれていて、山なりを描いていた。
少しずつ近づいてくる時、頭の片隅に全然似ても似つかないあの子の影が何故かちらついて、目を閉じた。

触れた唇は柔らかくて、甘い匂いがした。
気持ち悪い、そう思った時には彼女を突き飛ばして走り出していた。

嗚呼、最悪だ。
吐き気がする。彼女にも、自分自身にも。
でも、もう戻れないことも分かっている。
僕はあの子を傷つけた。


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