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By お茶
2010/08/29
本鈴が鳴るまで残り五分。
非常階段を駆け降りた俺が向かったのは、同じく校舎の一番端にある男子トイレだった。バシャバシャと冷たい水で顔を洗って、ギュッと蛇口を閉め、顎から滴り落ちる水滴を手の甲で乱暴に拭う。
"諦めない、諦めたくない"
あぁやっと本気になれたのかと、鏡に映る、青いなかにも一種の炎のが灯ったような己の瞳を睨みつけた。ライバルに嗾けられたことは気に入らないが、もう決めてしまった以上引くなんてことはしない。
(「好きって何?」)
不意に木霊したのは頑なに好意を拒み、壁となりつつあるシカマルの声。そして投げられた言葉に思わず立ち尽くして答えることすら出来なかった数分前の自分。
その問いに確実な答えを見つけた訳ではないけれど。
(だって仕方がないじゃないか…。)
落ちてしまったものは自分じゃどうしようもない。這い上がりたくとも、今のままでは上を向くことさえ出来ずに足掻いているのだ。
開き直ったような晴々とした気持ちに押されて、パチンッと頬を叩く。
「っし!」
もう一度水道の水で腫れぼったい瞼を落ち着けてからダッシュで教室へと戻った。
今日はいつも以上に絡んでやろう。
こんな形でしか伝え方を知らないから。でも拒絶されるより、伝わらないことの方が何倍も辛いから。
しかし、そんな決意など知ったことかという風にシカマルは現れない。
一限目が終わっても戻ってこないシカマルに変にそわそわしてしまう。時折キバが心配そうに視線を寄越してくれたけれど、軽く大丈夫と応じるだけで留めておく。
二時限目の終わりになっても姿を見せないシカマルにいよいよ探しにいこうかとも考え始めたときだ。終わりを知らせるチャイムまで残り時間数分というところでプリントを集めるよう指示が下り、先生…もといライバルのカカシが各グループから受け取っているときだった。
「あー、っと。まぁ言っておいても問題はないだろうから言っておくけど。」
手元に集められたプリントを適当に重ねながらカカシはいつものゆるい口調にて爆弾を落とす。
「今度の期末が終わったら、転任するから。」
先生代わっても成績下げるなよ〜、ま、その前に期末だけどな、なんて、サラっといつもと変わらないおちゃらけた話し方で。
「…え?」
今、教室にシカマルはいない。
だからって何でこんなもやもやした気持ちにならなければならないのだろう。
「ぁ。」
ぱちりと。
何となく目が合ったような気がして、でも交差させたままいるのはどこか居心地が悪くて、俺はぎこちなく視線を逸らす。
(な、んで…今…。)
突然の転任宣言にザワザワと騒がしくなる教室。
そんな喧噪など耳にすら入ってはこなくて、ただぽつんと、たった一人取り残された感覚に陥った。
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逃げのナルトside再び。でも何が言いたいかは書いた自分が一番分かっていない☆←
お次はエリーさんへ。
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