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By 蓮嘩
2010/07/26

「‥っ、」

どうにも鉄臭くて口をゆすげば殴られた時に切れた口内が僅かにしみる。避けようともせずに甘受した己のせいなのだが、なまじ力が強いキバの拳は思っていたよりも自分へダメージがあった。
赤くなった頬はその内紫に変換するだろう、腫れ上がる前に冷やしとかないと後々まためんどくさくなるな、と吐き出した水にほんのりと混じる赤が流れていくさまをボンヤリと見ながら思っていた。


人に興味を持てなくなった。
感情が欠落している訳ではないが、誰かを好きと言う感情をどうにも理解出来ないでいた。
触れたいだなんて、そんな感情は自分には持ちえない。いや、一度だけあった事を思い出す。




ふわりと風に乗って足元に落ちてきたのは少しくたびれた帽子だった。先程強めの風が吹いた時に飛ばされたのだろうと持ち主を探すべく辺りを見渡してみるが、持ち主らしき人物はいなく一応拾い上げた帽子をどうしたもんかと頭をかく。
さすがにそこに置いてく訳にもいかず、噴水を挟んだ向こう側にベンチがある事を思い出してそこに置いておこうと決まった散歩コースから少しルートを変えて歩き出す。
日に寄って預けられる親戚の家は苦痛でしかなく、家にいるのは最小限にしたいといつも散歩に出ては自分一人の空間を作っていた。歩くコースは預けられる家それぞれで違うが何度も散歩する内に自分の好きなルートが決まった、今日のルートは公園の片側が木々が生い茂っていて丁度この時間は木々の隙間から漏れる日射しが好きだったから決まったルートだ。

「あ、の‥」

歩き出した足を止める声に振り向けば大きく育った樹に隠れる様にしている子供がいた。

「これオマエの?」

「う、うん。さっき風にとばされたんだってば」

「ふーん」

「ひろってくれてありがとだってば」

「別に、目の前に落ちてきただけだし」

一向にこちらに取りに来ないソイツに取りに来るのが礼儀だろと思わなくはないが、なんで来ないのかとか考えるのが面倒でさっさと渡して帰った方がいいと思いそちらに足を進めれば更に樹に隠れる様にする姿に怪訝さが増す。

「ほら」

「あ、ありがとだってば」

おずおずと伸ばされた手に帽子を乗せてさっさと退散しようと思っていたら、ちらつく色彩に思わず足を止める。
ふわふわと風に靡く髪色と空を写したみたいな碧眼は自分と正反対で綺麗だった。風に靡く度にキラキラと輝く髪は柔らかそうでまるで上質の金糸の様で触ってみたくなった。
けれど渡した帽子を目深に被ったせいでそれは叶わなかった。

「それ大人用だろ?」

「うん。じーちゃんの」

「なんで?それじゃ前とか見えなくてあぶねぇーじゃん」

「これがいいんだってば」

帽子のつばを握りより目深に被った帽子は子供の顔半分は隠れてしまう、それが勿体無くてもう一度見たくて気付いたら帽子を取り上げていた。

「か、返して!!」

「なんで?」

「オレきもちわるいから」

「は?なにが?」

「オレの目もかみも全部きもちわるいんだってば」

「‥‥‥‥」

「みんな‥みんなオレがきもちわるいって言うんだ‥だから見られたくないんだってば‥」

見るなと腕で顔を隠す姿にあぁ、と思う。
確かに見慣れない髪色や瞳の色は子供にとっては未知の人種に見えてしまうのだろう、そんな低俗なイジメみたいなもんは気にする必要などない位に綺麗なのに。

「だから隠してんの?」

「それかぶってれば何も言われないから‥」

「もったいねぇ」

「え?」

「キレーなんだから隠すなよ」

せっかくの色彩が隠れてしまうのは勿体無い。たまに見掛ける金髪は痛め付けられた髪が悲鳴を上げていて綺麗だとは思わない。
無理に変えられた色と紛い物の瞳の色とは比べ物にならない位にその自然な色彩は単純に綺麗だと思った。だから素直にそう言葉が出たのだが、言われた本人はキョトンとしたまま動かず数拍遅れて嬉しそうに笑ったのを覚えている。
それが唯一触れたいと思った出来事だった。





「あー‥プリント忘れた」

「コレのこと?」

保健室に向かう途中、殴られた拍子に散乱したプリントを拾うのを忘れて踵を返せば元々の持ち主、と言うのは意味合いが少し違うがそのプリントを頼んだ相手が所々皺になったプリントを持って立っていた。







◇◇◇

一番始めに繋げられたわ(笑)
ナルトが恋に落ちた出来事をシカマル視点で!

そんで話は元に戻って、お次は壱子に任せたー!!



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