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By 恵利
2010/07/23

 カカシに渡されたクラス分のプリントを持って教室に戻っていると突然背後から呼び止められた。聞き覚えのある声に、しかし苛立ちを持った声に内心首を傾げながら振り向こうとしたところでシカマルは乱暴に肩を引き寄せられた。強制的に相手と向かい合う形をとらされ、また乱暴に肩を掴まれた痛みに眉間に深い溝が刻まれる。

「っ…何しやがんだ、キバ」

「何、じゃねえよ! お前こそ何やってんだよ!」

 怒りに顔を染め、走り回ってシカマルを探していたのか、体力のあるキバにしては珍しく肩で息をしている。キバと知り合って、ここまで怒っている姿を見たのは初めてだ。

「はぁ? 何の話だよ。つか、手離せよ」

「お前っ! ナルトのやつ泣いてたんだぞ! お前に好きって何なんだって聞かれて答えらんなかったって…! お前、ナルトのこと好きじゃなかったのかよ!?」

 シカマルのいつもと変わらない態度が今は無償に腹立たしい。怒り任せにシカマルの胸ぐらを掴んで壁に押し付けるとシカマルは強打した肩の痛みに顔を歪ませた。

「好き? 俺がナルトを? はっ! 好きって感情が何なのかも分かってねえガキが、んなもん持つかよ! 俺にとってあいつは毎日毎日、俺に寄ってきては昼寝を邪魔するめんどくえヤツ以外の何者でもねえよ」

「っ! シカマルッ!!」

 ギリ、とキバの怒りに耐えるように噛み締めた奥歯が鳴る。震える程強く握りしめられた拳を、とうとうキバはシカマル目掛けて振り下ろした。






 最初の記憶はまだ自分の足で立つことも歩くことも出来なかった頃から始まっている。
 両親はその頃から仕事が忙しくなったらしく、殆どを親戚の家で過ごした。あまり泣かず、愚図らず、手の掛からないこどもだった自分を両親は親戚に預けることに申し訳なさを感じながらも安心していた。
 古い土地に住む古い一族故か、親戚連中は近くに住んでいて、小学校に上がるまで両親が迎えに来るまでの間を親戚の家で過ごした。その日、その日で異なる家。そんな時にシカマルは一族の中にある妬み合いながらも表面には一切ださない大人達を見てきた。互いに化かし合う一族の大人に嫌気がさした。そして年を重ねる度にそれは自分と同じ年頃のこども達にも影響していく。
 面倒だと思った。化かし化かされる関係に飽き飽きしてシカマルはいつしか人を見ることを止めた。





 左目がキバの拳を認めた。そして一瞬の後に訪れた左頬の焼けるような痛み。
 勢い良く殴りかかってこられたお陰でシカマルの体は堪えられずに傾ぎ、手にしていたプリントが派手に散らばった。白いプリントがまるで非現実のように宙を舞い、ひらひらと廊下の上へと落ちていく。キバに殴らた頬をさすりながらシカマルはそっと息を吐き出した。

「気は済んだか、バカ犬」

「な゛っ」

「俺は誰も好きになんかなんねえよ、きっとな」

 そう、アイツは"好き"を答えらんなかった。そしてアイツは触れたい、と答えた。そのどちらが正しいのかは分からねえ。ただ一つ、俺はアイツに触れたい、と思ったことは一度もない。だから、俺はアイツを"好き"なわけじゃない。ただ、俺は……傍で笑っていて欲しい。


 それ以上の感情を持ち合わせることは、ない――




――――

長いことお待たせしておいてのコレですみませんorz

次は蓮嘩さん、選手交代です☆



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