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By 壱子
2010/07/06



今にも泣きそうに睨みあげてくるナルトに少し困った表情を返しながら、ここまで思われる彼の事を思いだしていた。
思い出す、というほど記憶の片隅にあるわけではない。教職に就いて幾年、一番親密な関係になった生徒なのだから、常に頭のどこかにシカマルの事はあるのだ。
あまり変わらない表情とその面倒を嫌う姿勢からあまり人気はないようだけれども、一度でも彼としっかりと関わった人間はことごとくその人柄に惚れてしまう。
意外と思いやりのあるシカマルを頭に描きながら、とりあえずこの現状に戻ってみることにした。

「で、ここでウジウジして何か変わるの?」

「うっさい…」

「それが場所を提供してくれている先生に言うセリフですか」

「だって…」

「だっても何もねぇ。恋敵のとこにくる状況じゃないでしょ?」

「………うぅ」

「それとも諦めるの?」

「諦めないってばよ!」

がばっと、勢いよく顔を上げてその部分だけ大きく主張するナルトに少しばかり呆れながら新しく淹れたコーヒーに口をつけた。

「それで、どうするの?逃げてきちゃったんでしょ?」

「う…。だって…」

「そういうとこ意気地がないよねぇ」

「うぅぅ…!」

目の前でどんどん小さくなっていくナルトに苛めすぎたか、と口を閉じつつ、これから自分がどうすべきか考えることにした。
可愛い教え子の恋を応援したいという気持ちは確かにある。ずっとシカマルを想ってきたのはサクラから嫌というほど聞いているし。しかも手を出すなという脅し付きで何度も頂いている。
けれども、誰しも自分の感情を優先したくなるのは自然の摂理というもので、シカマルという存在はそう簡単に諦められるものではない。
ナルトにはまぁ、刺激が強すぎるものだから言ってはいないけれども、所謂体の関係というのもあるっちゃあるわけで。大人の汚さというのは自覚しているものの、意外と独占欲が強かったらしい自分に正直に生きるべきか現在進行形で悩んでいるというわけだ。

「ナルトは、本気でシカマルに告白するの?」

「……」

「ちゃんと、付き合ってほしいって。じゃないとあの子は真剣に考えないよ?」

「…だって、そんなことしたら今の生活が崩れちゃうし」

「じゃあ、ナルトは今のままが一番いいの?」

「………」

「無言は肯定と取るけど」

「恋人になりたい、って思ってるけど、でも、」

ぐ、と拳を握りこんで俯いたナルトに、持っていたカップを机に置いた。
目の前で揺れる金色の髪目掛けて平手を振りおろせば、まるでカエルが潰れたような声が聞こえる。実際に聞いたことがないから正しくはないけれども、まぁ、強ち間違ってはいないだろう。
痛そうな音がした、と他人事のように思いながら、恨めしそうに睨みあげるナルトににっこりと笑みを向ける。

「男でしょ。そろそろはっきりしなさい」

「なにも、殴ること…!」

「愛の鞭です」

「先生には分かんないってば!」

「…あのねぇ」

「だって、シカマルと話せなくなったらとか、笑いかけてくれなくなったら、とか!恋人出来る方がもっと嫌だけど、でも、今が崩れたらおれ、立ち直れねーってばよ…!」

「でも、そうやって逃げてたら、シカマルはお前のことちゃんと考えないよ?」

「分かってる、けど…」

「…まぁ、俺はそのままウジウジしててくれてもいいけどね」

「え…?」

「俺も本気でシカマルが好きだって、知ってたよね?」

向けていた笑みを崩して、少し目を細めてナルトを見据えた。真剣な表情、とでもいうのだろうか、流石にナルトも本気だと分かったようで、表情を引き締めた。
そしてすぐに、その目に怒気を含めて睨みつけてくる。

「生徒には手を出さないんじゃなかったってば?」

「本気は例外。一人前に睨む前に、ちゃんと行動しなさい」

「っ…!その言葉、後悔させてやるってば…!」

床に投げ出していた鞄を拾い上げて、荒々しく出ていったナルトに小さくため息をつきながら、準備室の後方にもう一つある扉に目を遣った。
よっこいしょ、と無意識に口から出た言葉に流石に年を感じて切なくなりながら、ゆっくりと隣接された教室に繋がる扉を開ける。
すれば入ってすぐ横、黒板の真下に、今の今まで話題の中心だった人物が蹲っていた。

「あんた、俺の事好きなの?」

「あ、聞いてた?」

「分かってただろ…」

はぁ、と深いため息を吐きながら、めんどくさそうに立ち上がったシカマルに軽く手を貸した。

「まぁ、真剣に考えてあげなさいよ」

「…あんたのことは?」

「んー。まぁ、そこはお任せかな」

「はいはい」

帰る、と背中を向けたシカマルの手を取れば訝しそうに振り返る彼に、他の生徒には見せることのないらしい笑みを向けつつ、そっと指先に力を込めた。

「すきだよ」

「…うるせぇ」





――――――
え、えへ!
カカシが出たらこうするしかないじゃない、とか思って突っ走ってみました!ごめんね!
そんでお待たせしましたー!ごめんねー!
次は予告を裏切って恵利さん!とか行こうと思ったんだけど、さすがにがっつり予告したのでその通りに蓮ちゃんに回そうと思います。
蓮ちゃん、君に決めた!!


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