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By お茶
2010/06/28



つかつかと挨拶もせずに図書室へ入り込むと、呆けたままのシカマルの隣に置いてあった鞄を取って行こうぜとせっついた。勿論、目の前にいる先輩など眼中には入れない。

「きたないとは失礼だな、犬塚キバ。先輩に対しての言葉遣いがなってないんじゃないか?全く、今度カンクロウにでもその辺りを叩き直して貰わないとな。」

しかしテマリはと言えば特に焦ることもなく、シカマルに添えていた手を顎へ持っていき、思案しているような風にふむとこぼす。チラリと合った目は面白そうに細められていて。

(何か、ムカつく…。)

シカマルではないが確実に眉間には皺が寄っているだろう。あぁもうそうやってニンマリ含んだように笑うのは止めて欲しい。

「じゃ、一通り終わったことだし、俺は帰らせて貰いますよ?」

これ幸いとばかりに俺の手から鞄を引ったくったシカマルは、使っていた椅子をきちんと戻してから出入口へと向かっていた。置いていくなんて酷いなーとこっそり口を尖らせつつ、図書室を出たと確認したところでくるりとテマリと向き直った。

「気付いて、ましたよね?」

「お?何だちゃんと敬語使えるじゃないか。」

相変わらず面白そうに見つめてくる相手に軽い居心地の悪さを感じて、いや実際に後ろめたいことはやってしまったけれど。そんなことはこの際そのあたりに放り投げておくとして。

「ナルトの気持ちくらいアンタなら知ってるだろうが。」

つい怒りを込めた口調になってしまった俺に、おやおやとわざとらしく肩を竦めてみせるテマリにまたふつふつと熱いものが沸き上がる。

「あんまり掻き回すようなことは、してほしくない。」

何言ってんだかとも思ったがそれが本心だった。

そりゃ知ったときこそしばらくは理解出来る筈もなく、同性同士かよとうげーとなったこともある。毎日のように繰り返される告白シーンにウンザリすることも多々あった、けれども。
いつだってふざけるようにシカマルと絡むナルトが、いつだったかシカマルのいないときにポロリと弱音を吐いたことがあった。そのときに初めて知った、あぁこいつはこいつなりに悩んでいるんだなぁと。そんなナルトを見ているからこそ、その気持ちを適当に潰す輩は許せない。最初に馬鹿やってしまったからこそそんな心境になったのだ。これはチョウジも一緒だと思う。
無意識に掌に力が入っていたらしい俺を見て、テマリもさすがに察してくれたのかやれやれといった風に溜息をついていた。

「当たり前だ。ナルトのことに手を出そうとすれば、我愛羅に咎められるからな。出来ればそれは避けたい。」

どこまで弟馬鹿なんだと思わないでもなかったが、有り難いことには変わりないので無言でもって返す。そしてもうこれ以上話すことはないと踵を返してガシャリと扉を閉めようとしたとき、あぁ一つ付け加えておくがと言い出したテマリの声が背中に響いた。

「私がシカマルを気に入っているのは本当だからな。」





急いで昇降口に向かうために階段を下りていると、先に出て行った筈のシカマルが踊り場で待ってくれていた。全く関係ないけれど、こいつのこういうところは男として見習いたいと思う。

「助かった。」

「へ?」

「だから、お前が来なかったらあのまま捕まってただろうしな。」

「あぁ。」

「そういや何であんなとこいたんだ?」

素朴な疑問、といった感じで特に探るようでもなく聞いてくるシカマルに、んー?と動揺を隠しながら靴に足を突っ込む。

「偶々だよ偶々。通り掛かったらシカちゃんが襲われそうになってたからさぁ〜、貞操守ってやんなきゃってな。」

げらげらと笑ってみせる俺に、シカマルは聞いた俺が馬鹿だったとそっぽを向いて、もう一度、まぁ本気で助かったからいいけどなと苦笑を漏らしていた。俺はひたすら昇降口に向かって足を進める。

言える訳ねぇじゃん…。

少し前から、ナルトと二人で覗き見めいたことをやっていたなんて。

「つかナルトは?」

お前ら部活一緒だろ?と続けるシカマルに俺はナルトからの伝言を伝えた。予想通り、シカマルは呆れたように玄関を潜る。

「ったく、んじゃ待たなくて良かったんじゃねぇか…。」

面倒くせぇ仕事まで押し付けられたしよ、時間の無駄だったと凝り固まった筋肉を解すように腕を回すシカマルを見て、ふと、傷付いたように歪められた顔を思い出す。
テマリがシカマルに手を伸ばした時点で明らかにナルトは震えていた。いつものあっけらかんとした雰囲気とは掛け離れた、およそ似合わない切羽詰まったような。それでも中に入っていこうとしなかったのは移動教室のときの件があったからなのか。

隣を歩くシカマルに視線をやって、また足元へと落とす。

ナルトのこともシカマルのこともどっちも大切な友人だ。ナルトの想いが生半可なものではないことは分かっているし、けれどもそれをシカマルに押しつけるようなこともしたくない。何よりそれはナルトが望まないだろう。

「何突っ立ってんだよ、早く行こうぜ。」

いつの間に漕ぎ出したのか数メートル前を行くシカマルに気付いた俺は、悪ぃ悪ぃと駐輪場から自転車を引っ張りだす。



(むずいよなぁ。)



シカマルへの謝罪の言葉を俺に託して先に帰ってしまったナルト。
でもきっと明日になれば、またケロリとした顔をして徹底的にシカマルに絡むんだろうけれど。



急いで追いつこうと自転車に跨がって、複雑な気持ちを抱えたまま振り切るように思いっ切りペダルを踏み締めた。








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フラグをスルーしましてちょいとキバ視点でシリアス気味に…えへっ☆←
さてさて。お次は蓮嘩さんにーポイッw




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