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By 壱子
2010/06/28
「いつものことですけど、俺の仕事多くないすか?」
「仕方ないじゃないか。早いんだから」
「……いやいや」
目の前に積み上げられた次の会議の資料に不足している部分を書き足しつつ、与えられた仕事の多さについ眉間の皺が増えてしまった。
一応ポジションとしては何の責任もない平委員だったはずにも関わらず、一度テマリに仕事をしているところを見られて以来こうして右腕のように扱われることが多くなっている。
もちろんこちらとしては不本意この上ないのだけど、さすがは長を務める地位にあるからか、テマリが使える人間を手放すはずもなくこうして捕まっては手伝いを強制的にさせられているというわけだ。
この資料の束も都合よく取り出されたもので、まさか行く先を把握されているのかと思うほどだ。
「終わりました」
「ん。やはり早いな」
「…そろそろ時間なんで帰っていーすかね」
「まぁ、待て」
そう言って鞄に資料を仕舞い始めたテマリを無視するわけにもいかず、浮かしかけた腰を再度椅子に落ち着けた。
そういえば、と、開いたまま放置していたの本にしおりを挟んでいつでも帰れるように鞄の中に入れておく。
意外と気になるところで止めているからすぐにでも読みだしたいのだけど、一応は先輩の前だ。つくづく変なところで真面目な自分の性格が嫌になりつつ、ちらりとテマリに視線をやれば、椅子一個分離れていた距離が真横にまで詰められていて、思わず目を見開いた。
それを目に止めたテマリがニヤリといい笑みを浮かべて、頬が引き攣る。
「なんすか…」
「お前、うずまきナルトに迫られてるんだってな?」
「…はい?」
「男から迫られるというのはどういった感じなんだ?」
「…いきなりなんすか」
「もしお前が嫌がっているんなら、」
「は、」
「私がどうにかしてやろうか?」
す、と伸ばされた指先が触れるか否かの位置で頬を滑り、ぞわりと背筋を冷たいものが駆け抜けていく。
これがナルトなら思いきり手を叩き落としているところなのだけど、相手は先輩で、その前に女性だ。常日頃、女性には優しくと母親から叩きこまれているものだからここから逃げる手段はあまり選択肢がない。
人が見ているという常套句は、放課後、人気の全く無い図書室では使うことは出来ず。
というよりもこういった状況に陥ることは初めてなわけだから、いつもは回る頭も現状を理解できていないらしい。まるでパソコンがフリーズしているかのように固まった自身に頭痛を覚えながら、とりあえずやんわりとその手を遠ざけようとして、後ろから掛けられた意外な人物の言葉に驚きを隠せなかった。
「きったねー手で俺のシカちゃんに触んないでよ、センパイ」
振りかえった先には、扉に背を預けながら不機嫌そうにこちらを睨むキバの姿があった。
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ちょっと短かったかな、と思いつつ。
このフラグをフラグと処理するかは君に任せた!
お茶さんにバトンターッチ!
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