決意をもったカエル

『ねぇ、私と一つになりましょう?
 そしたら貴方は…もう1人じゃないわ』

☆★☆★

隊長が居なくなった後、堕王子の病室で、窓の外の雨を見つめながら考えていたのはとても長く感じたがたった3分しかすぎていなかったらしい。

窓におぼろげに映るナイフを磨く堕王子の姿をみて、堕王子に、なのか誰になのか分らないが言葉を発した。

「まさか、あれを使っている人がいるとはおもいませんでしたー」

「なに?カエルも興味持った?」

無関心が売りのミー、けれども今回のロビーナだけはどうしても自分の欲を隠す事ができない。

「はいー。だから少し会ってきますー」

「は?なに、それまじでいってんの?」

封印されたリングが今ミーの近くにある。

30年前あのリングを封印したのは確かに記録に残っている、というか一度その封印された地にいったことがある。

そして、師匠でさえその封印を解けなかった。

もっとも、あのリングが闇属性だからということが問題だったのだろうが。

とりあえず、その闇の守護者を見てみたい、そして、ロビーナを見てみたい。

この世界で一番残酷で、綺麗と言われるリングをそしてその結末を

☆★☆★


「はじめまして―。姫さん。フランです―」

部屋に入れば長い髪をひとつに横に結んだ、日本人の女性がベットに座り外を見ていた。

この女性が、隊長の…とは思えませんねー。

『はじめまして、』

書かれた字はかわいらしく、声はどんなのかと聞いてみたくなる。

不思議と引き寄せられる女性だ。

「いきなりなんですがー姫さん。そのリングの封印姫さんが解いたんですかー?」

姫さんは少しうつむいて何か考えてから、ペンを持ち直した。

文字を書くキュッキュッという音が部屋に響く。

華奢な肩、細い腕、白い肌、小さな手。

ロビーナを1人で抱え込める容量なんてあるようにはミーの目には映らなかった。

『私が、解いた。この封印の中のあれを破壊するために。』

そしてリングをはめた指を悲しそうに見る

あれを破壊…あぁ、そうか。

だから薔薇のチェーンが傷付いているのかと納得する。

「けど、取ってどうするんですかー?
 その化け物、でてきて、姫さんだけの力で殺せるとでも思っているんですかー?」

今少し悔やんだ、自分の毒舌さを、今まで一人で抱えていた分優しくしなければ駄目なのかもしれなかった。

けれど、姫さんはそんなにきにしたようすもなく、文字を書いた。

『思ってない。けど、やらなきゃ駄目なの』

決意を秘めた目で、ミーを見つめてくる。

ミーにはできないこの目、それでミーの心はきまったんだ。

「ミーも手伝いますー。化け物だって、幻術ぐらい効くとおもいますしー」

驚いた顔で見てくる姫さん。

そんなにミーは手伝わなそうな見た目をしているのか。

まぁ、もっとも手伝う、といっても何をしたらいいのか分らないのだが。

それと、一つだけ注意をしておこう

「あぁ、そう、ここを出ようなんてバカなこと考えないでくださいねー?カス先輩、病んでるときうざいんでー。」

少し固まったままだった姫さんが、二コリとわらって書きだす。

『ありがとう』

その笑顔を不覚にも美しいと思ってしまった。

「あぁ、そうですー。
 皆さん10年間ずっと探してたみたいですよー
 ミーは知らないんですけどー。」

そう言ったら、何かが切れたように姫さんの頬に涙が伝った。

びくりとかたが揺れた、当たり前だこれで泣くなんて思ってなかったのだから。

「あ、あれ?ミーなんか駄目なこと言いましたー?」

大きく首を振って書きだした

『嬉しかった。』

あぁ、うれし涙か。

ミーには流せないその涙が。

「それじゃぁ、失礼します―」

部屋を出て深く深呼吸した、少し吃驚したんだ。

人に愛され、心を持ち、心を表に出せる闇の守護者など聞いた事がないからだ。

「ミーなんかよりも喜怒哀楽がありますねー」

少し心が痛んだが、これを手伝うのは紛れもなく、ミーがここを好きだからなんだ。






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