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※大したものではありませんが首絞めたりしてるので注意
 

 





 そんなに死にたいなら殺してやってもいいと、思った。



 これほどのデュエリストを手放すのは惜しい。強いだけではなく、自分の言葉に逆らいもしない、本当に人形か何かのような男。これほどの人材、もう他には出会えないだろう。他所にやるつもりも、やすやすと解放するつもりも、さらさらない ――なかった、はずなのだ。


 ただ、あまりにも、死にたそうな目をしているから。



 手をかけた首は、思っていたよりも細い気がした。回した両手の、指同士が触れ合う。両の親指を形の良い喉仏に押し付けてやると、普段表情をほとんど動かさない男が、わずかに眉を寄せる。少しいい気分だ。デュエル中ですら無表情な男が、自分の手によって顔を歪めている様を見るのは。
 二人分の体重を受けたベッドが、ぎしりと軋む。白い指先がぴくりと動いて、皺だらけのシーツを軽く握った。


 白い首に回した手に力を込める。指が皮ばかりの喉に少しずつ食い込んでいく。ぎりぎりと時間をかけて、ゆっくりと首を絞めていく。最初は少し不快そうな顔をしていただけの男も、さすがに表情を変えた。ぎゅうと瞼を閉じ、薄い唇を半開きにしている。眦には生理的な涙がうっすらと滲む。かは、と呻き声とも吐息とも漏れないものが吐き出された。
 このまま絞め続ければ、確実に殺せる。誰もが敵わない死神をこの手で。妙な高揚感とともに、ぐ、と一層手に力を込めれば、また苦しげな呻き声が漏らされた。


「……ぁ、」


 きつく閉じられていた瞳が、うっすらと開かれた。潤んだ瞳はどこかうつろにあちらこちらを彷徨った後、おそらくは醜い表情をしているのであろう自分を見た。水面に映る満月のように、濡れた金色の瞳が光る。
 そしてランプの明かりを反射してきらめく瞳は、いつものように、揺れるのだ。


「……やめましょう、先生。明日もまた、先生には働いてもらわなきゃなんねぇんだ」


 ぱっと手を離してやると、急に酸素を取り込んだせいなのか激しく咳き込んだ。そのまま薄く指の痕がついた喉をさすりながら、恨みがましそうな目で、じろりとこちらを睨みつけてくる。どうして止めたんだと言いたげな視線だった。その瞳にももう慣れた。軽く肩を竦めて見せ、ベッドから降りる。


「この続きは、またいずれ」


 そう言って何度、中途半端なまま終わらせてきたかもわからない。このやり取りも幾度目だろうか。数える気さえなかったせいか、覚えていない。片手の指で数え切れるほどでないことだけは確かだ。



 そんなに死にたいなら殺してやってもいいと、思った。



(……バカバカしい)




 本当に死にたい人間が、あんな目で、首を絞めてる人間を見るものか。
 あんな――まるで、縋るような瞳で。








―――――――
なんか最近ほんとう鬼柳受けと言うかラモ京と言うか鬼柳熱すぎて餓えている…渇いている…。



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