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(ルドガールート後・ルドガーとTF主人公)







 どうして、と涙に濡れた声が囁いた。白い龍の向こう側、一人の女性が泣いている。闇色の瞳はとても悲しげで、何かを訴えているようだ。青ざめた唇は小刻みに震えながらも、その名を呼んだ。

 それが最後だった。融けるように、闇の中へとその姿が消えていく。
 ダークシグナーとしての死――二度目の死だった。もうその魂が蘇ることはないだろう。
 自分を弟と重ね、とても優しく微笑みかけてくれた。表の仕事を手伝うこともあったし、それなりに親交があった相手だった。


「よくやったな」


 その場に立ち尽くしていると、背後から声をかけられる。別段驚くことはなかった、彼はこのデュエルを見ていたのだから。

「ルドガー…」
「カーリーに続いてミスティも始末した。残すダークシグナーは鬼柳とディマク…どちらも厄介だが、お前ならば何の問題もないだろう」

 ルドガーの言葉に無言で頷いて見せると、彼はとても満足げな笑みを見せる。

「それにしても…他のシグナーしかり、彼女の絶望は推し量れぬな。よもや亡くした弟と重ね、慈しんでいたお前に殺される羽目になろうとは…お前も少なからず、ミスティを慕っていたのだろう?」

 容赦のないデュエルだったが、と余計な一言を付け足して、ルドガーはくつくつと笑った。自分がデュエルには妥協しない性分であることを知っているくせに、随分と白々しいことだ。
 そういう闇に引き込んだのもお前だろう――言いかけて、留まる。引き込んだのはルドガーでも、結局選んだのは自分だ。逃げることもできた、振り払うこともできた。


 シグナーを手にかけ、不動遊星を葬り、ダークシグナーまでにも対峙することを選んだのは、他の誰でもない。


「――さて、次の標的はどちらにするか…いや、どちらを取っても、お前は期待通りの働きを見せてくれるのだろうがな」

 次も期待している――そう告げて、ルドガーは闇にマントを翻した。その背中を追いかけながら、ふと夜空を見上げた。
 雲に覆われ、月も星も見えない空――決して珍しくもない空模様のはずが、重くのしかかってくるようだった。


(……それが何だ、)


 いまさら空などどうでもよかった。世界すら。自分はただ望まれるままに、カードを引くだけだ。それが望みなら、かつて仲間と呼び絆を結んだ彼らでさえ、………


「何をしている、行くぞ」


 ――そうだ、彼の言葉さえあればいい。たったそれだけ、この世界にはそれだけで十分。






――――――
どうでもいい補足。
「龍」は裁きの龍のことです。TF4はライロとワームがメイン。



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