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(二人がプロだったらパラレル)



「あー、だから、今日はオフだって言ってるだろ!……は?今日がいい?どうしても?オフだって前々から言ってんのにいきなり押しかける方が悪いんだろ?俺は知らないからな!」


 声を張り上げて、相手の返事を待たずに通話を終了する。お気に入りの赤いカラーリングが施された携帯をポケットにしまい、十代は溜息をついた。

 プロデュエリストが忙しいというのは、エドや万丈目の話を聞いてなんとなく知ってはいたが、十代は特に多忙だった。アカデミア卒業の際の卒業デュエルや、かつて幾度も世界の危機を救ったとまことしやかに囁かれる噂の数々、エドや万丈目、元プロデュエリストのヘルカイザー亮ら名だたるデュエリストたちとの輝かしい戦歴。
 あらゆる会社や報道陣などが、そんな十代を放っておくはずもない。万丈目などのようにエンターテイナーとしての活動はせず、ほとんどデュエルに明け暮れる毎日ではあるが、雑誌やテレビの取材は毎日のように訪れる。デュエルをして欲しいと言うデュエリストも数多く、休みなど滅多に取れるものではなかった。

 今日はそんな貴重なオフ。しかも前々から宣言してあったのだ、たとえどんなお偉方が来ようが旧友が来ようが名高いデュエリストが来ようが、意地でも誰かのためにデュエルや仕事をする気はなかった。


「カリカリしてんな、十代。こんな大変な時に、悪い」
「別にお前のせいじゃないって。こっちこそ変なとこ見せて悪いな、ヨハン」


 十代の出したコーヒーを飲んでいたヨハンは申し訳なさそうに目を伏せたが、十代の言葉を聞いて、少し安心したように微笑んだ。十代のオフにあわせてほぼ無理矢理休みを作ったと言うのだから、謝るのはむしろこちらの方だ。けれど謝ったところで、ヨハンは俺のためだからいいんだよと笑って流すだろう。以前も同じようなことがあったなと思いつつ、十代は向かいに腰を下ろす。

 ヨハンはごちそうさん、と誰にでもなく呟き、すっかり空になったカップをソーサーに戻す。

「あ……おかわり飲むか?」
「いいって、気なんて遣わなくて。それよりさあ」

 ヨハンがすっと立ち上がって、向かいに座る十代の目の前にすっと歩み寄った。宝玉の瞳が十代を映す。十代は物言いたげなヨハンの瞳を見つめ返して、ぽん、と手を打った。

「ああ、久々にデュエルするか?」
「え?あー……えーと、ああ、うん。そういえば大会とか、お前と全然ぶつからないもんな……」

 にこりと笑う十代の笑顔に目を細めながら、ヨハンはぐったりと十代の隣に座り込む。

 そういうことを言いたいわけじゃないのに、ああ、十代のばかやろう。ヨハンはおそらく十代に聞こえないようにしたつもりなのだろう、小さな声で、ぼそぼそと愚痴をこぼした。しっかりとそれを聞き届けた十代は、ぐったりとしているヨハンを見、口元を緩めた。そうしてすっと頬に手を伸ばし、こちらを向かせる。十代?とぼんやりとした声で自分を呼ぶ唇を軽く塞いでやった。瞳が大きく、見開かれる。

 重ねるだけのキスだった。十代はしばらくして唇を離すと、不満げに唇を尖らせる。


「お前なー、こういう時は目ぇ閉じろよ……」
「悪い、それどころじゃなかった。……お前、いま」
「バーカ。さすがに察してるっつうの。……久しぶりに会ったんだもんな」


 十代が淡く微笑むと、ヨハンは堪えきれなくなったかのように、突然十代を抱きしめた。力強い抱擁に、いてえよ!とばしばし背中を叩くが、ヨハンは腕の力を緩めようとしない。


「あー、十代だ……じゅうだいの匂いがする……」
「ばっ……意味わかんねーこと言うな、離せって!」
「いいだろ、久しぶりに会ったんだから。……なあ、デュエル、後でいいよな」
「……ったく。ちゃんとデュエルの時間作れよ」


 わかってるって。絶対にわかっていないような笑顔を浮かべ、ヨハンは十代の前髪を掻きあげると、額に口付けを落とした。





―――――――
一緒の大会とか出たら、力の配分上同じブロックにはならなそう。



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