一方通行 | ナノ






イッシュ地方に旅行をして、私は昨日ジョウトに帰ってきた。つい数週間前までいたというのに、エンジュシティを歩くのはどうしてか久しぶりな気がした。そびえる焼けたとうを見て、ああ帰ってきたんだなって実感する。何故エンジュシティにやってきたのかというと(私はエンジュから少しそれた道路脇の家に住んでいる)イッシュ地方を旅行したついでに、私は沢山のポケモンを捕まえてきた。だから見るポケモン見るポケモンが新しくて凄く楽しくて、絶賛片想い中なエンジュのジムリーダー、マツバさんにも見せてあげたいって思ったからである。


「マツバさん!!久しぶりです!!」


「ああユカリ、久しぶり。イッシュ地方はどうだった?」


いつものようにイタコのお婆さん達が避けてくれた道を落ちない程度の速さですり抜けて行けば、私が旅行に行く前となんら変わらずマツバさんがいた。会わなかった間も私はマツバさんでいっぱいだったから、あまり会っていなかったという感覚はなかったけど。


「凄かったですよ!マツバさんにもポケモン捕まえて来たんです。デスマスですよデスマス!」


「デスマス?」


百聞は一見にしかずということだし、と私はハイパーボールを投げた。ジム戦をするだけのスペースはあるから、大丈夫だよね。床に弾かれたボールから現れたデスマスは、すぐさま私の方に寄ってきた。可愛いので出来れば撫でたいところだけど、撫でれるのか分かんないのでやっぱり止めた。


「ゴーストタイプのポケモンに気に入られやすいのも相変わらずだね」


「そうみたいです」


そう、私はゴーストタイプのポケモンになつかれやすい。昔はこの自分の体質というか特性というか、とりあえずまあゴーストタイプに好かれるのは嬉しいことではなかったのを覚えている。トレーナーごっこ、なんていって暗い洞窟に入る度に友達の後ろに隠れていたのも。けど、今は違う。だってその体質のおかげで私とマツバさんは出会った。ジムにこうしてお邪魔出来るのも、その出来事があってからだ。勿論マツバさんのおかげでゴーストタイプの可愛さを知ったのも大切な一要素だけれど。


「マツバさんデスマス持ってたりしますか?」


「ううん、まだだ」


「じゃあそのデスマス、マツバさんに」


「デスマスを?ユカリはいいの?」


「マツバさんに育てて貰ったデスマスが見たいんです。遠慮しないで下さい!っていうか寧ろおやになってあげて下さい」


「あ…うん。ありがとうユカリ、優しいんだね」


私が握らせるように渡したボールを手にして、にっこりいつものマツバスマイルを浮かべたマツバさん。ああ素敵です。でもねマツバさん、優しいんだねって、私がこんなことするのはマツバさんだけなんですよ。気付いてるかな。




もどる