Prologue


天気は快晴。
小春日和のある日のこと。
私、鈴木多岐は永眠しました。
お昼寝をするように、静かに、穏やかに。
享年九十七歳、大往生です。

辛い事もありましたが、それ以上の幸せで満たされた、悔いのない生涯でした。
ですから、思い残すことは何もありません。

ない、はずだったのですけれど...

ふと、

気がつけば、

ふわふわと、お昼寝から目覚める途中のような感覚。

それがなんとも言えず心地がよくて、

ふわふわ、ふわ、ふわふわ、

しばらくその微睡みに身を任せて揺られていれば、意識がゆっくりと浮かび上がる感覚がして、反射的に”目を開く”と、

視界いっぱいに、見ず知らずの若者さんのふにゃふにゃにとろけた笑顔がありました。

”どちらさまかしら…?”

と、不思議がる私に、何を思ったのか若者さんがお顔を近づけて来ました。
…お顔はふにゃふにゃとろけ笑顔のまま。

”…!!”

頭が真っ白になる、というけれど、こういう事なのねぇ。
私、思わず叫んでしまって…

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

………………おぎゃあ?

To the New World.


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