Metempsychosis
in Tales of the Abyss

神託の盾の検問

タルタロスは都市の近くを走行していたらしく、城砦都市セントビナーに着いたのは翌日の昼前の事だった。

先頭を切って歩くルークとガイだったが、街道の向こうに都市の入り口が見えた時、ガイが足を止めた。

「ガイ?」
「マズいな。神託の盾がいる」
「「!」」

真剣な顔で言ったガイの言葉に、ルークとイオンが目を見開いた。

2人の驚きは尤もではあったが、今は隠れるのが先決と言うことになり、森の中を進んで外壁の側面に辿り着く。

ここでもやはり先頭に立ったルークがこっそり入り口を窺うとイが見た通り、神託の盾が数人入り口に立っており、都市に入る旅人を呼び止めている。

検問を布いているようだ。

「なんで神託の盾騎士団がここに……」
「タルタロスから一番近い街はこのセントビナーだからな。休息に立ち寄ると思ったんだろ」

ややうんざりとしたルークのボヤキにガイはあっさりと答えた。

一見何てことない言葉だったが、ジェイドは再び(、、)引っかかりを覚えて最後尾で静かに目を光らせる。

「おや、ガイはキムラスカ人の割にマルクトに土地勘があるようですね」こちらもさり気ない物言いだったが、その中に含まれた探りに気付いたのは訊かれた当人とリスティアータだけだった。

「卓上旅行が趣味なんだ」
「これはこれは、そうでしたか」

何とも白々しいやり取りだったが、リスティアータはしっかり真に受けた。

「まぁ、楽しそうね」
「は?あ、ああ、なかなか楽しいんだ」

場に合わない会話を余所に、前に乗り出し過ぎているルークの襟首を引き戻したティアは、ふと見た街道から来る荷馬車にジェイドを振り仰いだ。

「大佐、あれを……」

ティアの言葉に皆が入り口に目を向ければ、荷馬車が検問している神託の盾と話している所だった。

「エンゲーブの者です。ご注文頂いた食材をお届けにあがりました」
「ご苦労」
「後からもう一台参ります」

神託の盾はひとつ頷くと、通れとばかりに腕を振る。

馬車が都市の中へと消えたのを見て、ジェイドはにんまりと笑った。

「なるほど、これは使えますね」
「もう一台を待ち伏せて乗せて貰うんだな」
「エンゲーブへの街道を少し遡ってみましょう」
「そうですね、行きましょう」
「俺を置いて話を進めるなっ!!」

皆が口々に続き、話がポンポンと決まってしまうと、ルークが癇癪を起こして歩き出した皆に怒鳴る。

と、ティアはわざわざルークに歩み寄って言った言葉は、

「……子供ね」
「………」

とっても痛烈だった。



街道を遡って少しすると、先程の御者の言葉通り、一台の荷馬車が走ってきた。

「その馬車、止まれ!」

馬車が近づくや否や茂みから飛び出したルークに、馬車に乗っていた男性が慌てて手綱を引く。

速度はゆっくりとは言え、多くの荷を積んだ馬車が止まるのは大変なのだ。

馬車がルークの寸前で止まった事に、男性はどっぷりと息を吐いた。

一方のルークも馬車の勢いに内心ビビりながら、御者の元へと駆け寄る。

「カーティス大佐じゃないですか!それに確か…ルークだったかい、旅の人」

男性の横に座っていたのはローズだった。

色んな意味での驚きに、ローズは目をしきりに瞬かせている。

交渉を始めた皆を後目に、フィエラは馬車の前方へと近付いた。

そして撫でてみて、こてりと首を傾げる。

「……お馬さん、なのかしら?」

馬車と呼ばれるからには馬が引いているのだと思い撫でてみたのだが、どうも想像していた感触と違う。

何より、馬は4足歩行だった筈だ。

何故屈みもせずに前足が触れるのだろう……?

「リスティアータ様?」
「あら、イオン様。何か?」
「いえ、馬車に乗せて貰える事になったので、呼びに来ました」
「そうですか。では行きましょうか」

少し名残惜しそうに『馬』を一撫でしたリスティアータは、馬車の後方で再び首を傾げる。

「椅子は止めておいた方がいいかしら?」
「是非そうして下さい」

確かに全ての意味で目立つリスティアータの椅子を乗せても見つかる可能性を跳ね上げるだけだろう。

ジェイドはにっこり笑って肯定した。

「ではガイ。椅子を茂みの奥にでも隠してきて下さい」
「ああ、分かった」

やけにソワソワとした様子で頷いたガイは、何故か軽い足取りで茂みの向こうへと消える。

それから椅子を隠すだけにしては結構な時間が経った頃、漸く戻ってきたガイの表情は、妙にキラキラした満面の笑顔だった。




執筆 20081116




あとがき

ハツラツなガイ様。
きっとキラッキラしてる(笑)
椅子に触れてよかったね♪

プラウザバックでお戻り下さい。

Back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -