Metempsychosis
in Tales of the Abyss

魔界

タルタロスにアクゼリュスの人々を乗せ、ティアの言うユリアシティへの進路を進み始めて暫く。
リスティアータに付いているナタリア以外の面々は、甲板に集まっていた。

しかし、何処までも果てしなく続く障気の世界に、誰もが言葉に迷う。

「行けども行けども、何もない。…なぁ、ここは地下か?」

険しい顔で言ったガイの問いに、答えられる者は此処には2人いたが、それは必然的に詳しい様子を見せるティアに向けられる。

「…ある意味ではね。あなた達の住む場所は、此処では外殻大地と呼ばれているの。この魔界(クリフォト)から伸びるセフィロトツリーという柱に支えられている、空中大地なのよ」

外殻大地、魔界、セフィロトツリー、空中大地と、立て続けに出る聞き覚えのない言葉に、あまりしっくりと来ない様子を見留め、ティアがより詳しい説明をする。

「昔、外殻大地はこの魔界にあったの」
「信じられない…」
「二千年前、オールドラントを原因不明の障気が包んで、大地が汚染され始めた。この時ユリアが七つの預言を詠んで、滅亡から逃れ、繁栄する為の道筋を発見したの」
「ユリアは預言を元に、地殻をセフィロトで浮上させる計画を発案しました」
「それが外殻大地の始まり、か。途方もない話だな……」
「ええ。この話を知っているのは、ローレライ教団の詠師職以上と、魔界出身の者だけです」
「じゃあティアは魔界の…?」
「……」

詠師職にないのだから、当然そうなるのだけれど、ティアはどこか後ろめたいかのように沈黙する。

「…とにかく僕達は崩落した。助かったのはティアの譜歌のお陰ですね」
「何故こんな事になったんです?話を聞く限り、アクゼリュスは柱に支えられていたのでしょう?」
「それは…」

機を見て言ったジェイドの疑問は、当然のものだったが、イオンは言うべきか迷った。
しかし、いつか、必ず明らかになる事だ。
突き付けられる事実だ。
それに、今そんな誤魔化しは許される訳がなかった。

「……柱が、消滅したからです」
「どうしてですか?」

「……俺、か?」

ぽつりと、零れるように発された声に、全員が彼を見た。

「ルーク…」
「俺が、やったのか……?」

誰か嘘だと言ってくれと、無意識にだろう、自分の手をじっと凝視するルークに、躊躇いながらもティアは事実を述べる。

「…あなたは兄に騙されたのよ。そしてアクゼリュスを支える柱を消してしまった」
「俺、が…っ」

ザッと、音を立てても可笑しくないくらいにルークが青醒める。
敵を殺すのとはきっと違う、それは、-----------------------------殺戮と、同じ。

「…セフィロトの入口で、僕達はヴァンに気絶させられてしまいました。ルークの意思とは無関係に、力を使われてしまったんでしょう。……僕が迂闊でした。ヴァンがルークにそんな事をさせようとしていただなんて…」

そう。
頼れる者のいない、あの切迫した状況の中でも、ルークは懸命に自分で理解しようとしていた。

取り残された人を探してイオンと2人、少し皆から離れた奥まで向かった。

その先にいたヴァンに言われ、イオンが扉を解放する間、ルークは訊いたのだ。

どうしても住民の避難を先にしてはいけないのかと。

超振動で障気を中和出来る原理を。

例え難解な内容だったとしても、ちゃんと知った上でヴァンを手伝いたかったから。

しかし、そんなルークを、

ヴァンは嗤った。

『リスティアータ様の影響か、随分と賢しくなった。だが--------お前は考える必要などない』

首筋に、重い衝撃。

暗くなった意識の中で、冷たく響いたヴァンの声を、不思議とルークは覚えている。


『愚かなレプリカルーク----力を解放するのだ!』


もしかしたら、いや、きっとあの時、自分が柱を消してしまったのだ。

自分がアクゼリュスを崩落させた。

リスティアータの怪我だって、原因は自分という事になる。

総てを、自分が------------------------奪った。

「…何にせよ、ルークには事前に相談して欲しかったですね。仮に障気を中和出来たとしても、住民を避難させてからでもよかった筈ですし。…まぁ、今となってはどうしようもありませんが」

ジェイドの言葉が、ルークを抉る。

どうしようもない、

その言葉が、ずっしりと、押し潰さんばかりにのし掛かる。

無気力に壁に背を付け、ズルズルと座り込んだルークに、ガイが近付こうとしたが

「………っ…ひとりに、してくれ…」

酷く震えた声に、足を止めた。

それは明らかな拒絶だったから。

「ルーク…」
「っ…頼むから、独りにしてくれよ…っ」

誰も、ルークに掛ける言葉など見つかる筈がない。

この時、誰も気付かなかった。

自分を責める言葉に、ルークが何一つ反論しなかった(、、、、、)事に。




執筆 20090502




あとがき

この時のジェイドの責め文句、自分としてはあまり好きじゃありません。
相談出来ない状況の一因は、ジェイドにもあるんだし。
ハッキリ言ってしまえば信用度の問題な訳で。

とは言え、TPOを考えれば、あの時言えなかったのも理解出来ますけどね。

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