Metempsychosis
in Tales of the Abyss

愛しき人よ ー夫婦編ー

今日も今日とて理不尽な理由で仕事が長引いてしまったジェイドは、自宅の呼び鈴を鳴らした。

もう寝てしまっているだろうか。

いや、リビングの明かりは点いているのだし、少なくとも彼女は起きているだろう。

などと思いつつ。

誰が?やら、何故呼び鈴を鳴らすのか?などという愚問は受け付けない。

当然、自宅にいる【家族】に、自らの帰宅を知らせる為にだ。

セキュリティーこそ万全な造りだが、それでも万が一の不安は拭えない。
誰が何と言おうとも拭えないものは拭えない。

自分が居ない間(特に夜)は玄関の鍵を閉めておくようにと、何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し根気強く念入りに言い聞かせ、最近になって漸く実行され始めている戸締まり。

今日もしっかりと実行されている事に、ジェイドは内心安堵した。

と、玄関の扉を挟んだ向こうから、パタパタと軽い足音が近付いて止まると、カチャリと鍵が外される。

間を置かず開かれた扉からひょっこりと顔を覗かせた彼女は、ジェイドの姿を認めるなり、柔らかく微笑んだ。

「お帰りなさい、あなた」
「ただいま帰りました、フィエラ」

彼女、フィエラと結婚してもうすぐ7年。

新婚期間など彼方に過ぎている事など自覚しているが、彼女、いや、妻に【あなた】と呼ばれると全身に喜びが駆け巡る。

勿論内心に留めているつもりだが、旧知の親友に呆れられる程までには態度に出てしまっているのかもしれない。

そう思いながらも玄関に入って扉を締めたジェイドは、無言でにっこり微笑むと、フィエラに向けて両腕を広げて見せた。

そんなジェイドにフィエラはきょとりと一瞬目を瞬かせる。

とは言っても、その仕草は彼女の癖のようなもので、ジェイドの言わんとする事など既に夫婦の恒例なのだけれど。

と、とすんと華奢な体がジェイドの懐へと飛び込んだ。

それを難なく受け止めて、1日ぶりのフィエラを堪能する。

彼女自身スキンシップは大好き(無意識なのだろう部分は大変始末が悪いが)なので、最初こそ照れていた(それはそれで大変そそられ、おっと、愛らしかった)が、慣れてきてからは躊躇のちの字も無く身を任せてくる。

全幅の信頼を寄せられて悪い気などする訳もなく、何とも言えない愉悦が湧く。

湧いた愉悦に従って、僅かに彼女から離れると、

ふ、と、本当に軽く、触れるだけのキスをした。

「……………っ」

途端、ぼっと真っ赤になるフィエラの、何と愛おしい事か。

ふよふよと視線が彷徨ったかと思えば、ジェイドに再び抱きついて胸板にすりすりと顔を埋める。

繰り返すが、夫婦となって、7年。

夫婦の営みなんてもう数え切れない程したにも関わらず、フィエラはいつまで経っても初々しい。

それが返ってジェイドの【欲】を刺激するのだとは思いもしないのだろう。

今だってそうだ。

柔らかな髪が一つに纏められた事で見える白い項が、首筋が、

抱き締めた事で感じる、柔らかな体が、甘やかな薫りが、

こんなにもジェイドのあらゆる【欲】を掻き立てて止まない。

その度に再確認せずにはいられない。

「フィエラ、」
「ジェ…ド…」



「…ぃ、おい、ジェイド!」
「!」

バッと体を起こすと、怪訝な顔をするルークとガイが。

「珍しいな、旦那が居眠りなんて」
「……居眠り?」

突然の展開に、何故だか頭が動かない。

「小一時間…ぐらい、寝てたぜ?疲れてんのか?」
「………」

ふむ、と、ジェイドは意味もなく眼鏡を押し上げた。

サッと視線を走らせればアルビオールの中で、総てが夢だった事を悟る。

途端、ジェイド周辺の体感気温が氷点下になった。

「「!?」」
「……………」
「ジ、ジェイド…?」
「……………………何か?」
「ヒッ!」
「っ!っ!っ!」

魔王だ、魔王がいる!!

恐怖に歪んだ2人の石像を造り上げた魔王ジェイドは、その後暫く不機嫌だったらしい。




執筆 20090911










あとがき


Projectにて飛鳥さんからの投稿ネタ

「夢主とジェイドの夫婦ネタ、2人の子供との日常生活」

を基に書いてみました。


物凄くデロ甘なジェイド夢の夢オチ(爆)
ジェイドと夢主がラブラブ過ぎて、子供は序盤にニュアンスでいるのかな?程度しか出せませんでした;
それに子供の性別や性格如何でジェイドの態度は大きく変わると思うし(笑)
続き書くつもりありますが、今回は此処まで。

本編が無事ジェイド落ちした暁には、幸せな夫婦話を書きたいな…(^-^*)

それでは、投稿主である飛鳥さんは勿論、皆さんに楽しんで頂ける事を祈ります(__)

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