誰か夢だと言って下さい。
いつもと変わらない筈だった1日は、
「うぉわぁぁああっ!?」リスティアータの雄々しい絶叫で幕を開けた。
「リスティアータ様!?」
「どうしたんですのっ!?」
「どうしたんですかぁ!?」
「何事ですか!」
「何かあったのか!?」
「大丈夫ですか!?」
絶叫は宿中に響き渡り、リスティアータの絶叫など初めて聞いた一行は、文字通り血相を変えて彼女の部屋に駆けつける。
ノックをしても返事がなかったので、やむを得ずドアを開けた皆が見たものは、非常に雄々しい(がに股で今にも「うおー!」とか叫びそうな)体勢でわなわなと震えるリスティアータの姿だった。
------…ん?
------…がに股?リスティアータ(様)が?
先程の絶叫と言い、あまりにも常とかけ離れた彼女の様子に皆、思考が上手く働かない。
と、リスティアータがゆっくりとこちらを見た。
その瞳は今にも涙が零れそうな程に潤み、とても庇護欲をそそられるのだが、その口から出てきた言葉は、
「どうしよう!俺…俺、女になっちまった!」
だった。
一先ず落ち着こうと、皆が皆自分に言い聞かせて部屋に入って彼女?の話を聞く。
「…つまり、朝起きたらあなた…ルークはリスティアータ様の体になっていた、と言うことですか」
「おお」
「………」
男らしく頷くリスティアータ(中身ルーク)を真正面から見たジェイドは、頭痛がして額を押さえた。
「本当に、ルークなの?」
「そうだって言ってるだろ…」
疑われたと思い、情けなく眉を下げて潤んだ瞳の上目遣いでリスティアータ(中身ルーク)に睨まれ、ティアはよろめいた。
「な、何でそんな事になってるんだろうな」
「そんなの俺が知りたいっつーの!」
あ、ルークだ。
ガイの自問に癇癪を起こしたように怒鳴ったリスティアータ(中身以下略)に、一同の意見が一致した瞬間だった。
「本当にルークなんですのね…」
皆と比べて付き合いの短いナタリアだけは幾分ダメージが少ないらしく、半ば感心したように驚いていた。
「ところで、さっきから気になってたんですけどぉ」
おずおずと、アニスがいつもの笑顔をヒクヒクさせながら言う。
「ここにいるのがルークなら、リスティアータ様は……?」
-------- 間 --------
長い長い沈黙の末、謀らずして全員が同時にザッと立ち上がり、行進宜しくルークが泊まっている部屋へと向かう。
行進しながら押しつけ合った結果、先頭へと押し出されたガイが紳士にノックをするが、返事は、無い。
きっと、まだ寝ているのだろう。
というか、先程の絶叫などの騒ぎの近くにあって未だ眠っているという事に、皆の嫌な予感は更に深まった。
微妙に震える手でドアノブを回すガイ。
カチャリと軽い音を立て、ドアが少し開けられた。
ゴクリ…
誰のものだか解らないが、喉を鳴らす音がやけに響く。
やがて、意を決したガイがドアをゆっくりと開け放つと、
「「「「「「……………」」」」」」
ベッドの中で、すよすよと気持ち良さそうに眠る、ルーク(予測される中身、リスティアータ)の姿があった。
一方、ほぼ同時刻のフィエラはと言えば、
『おい、聞こえるか』
『あら、アッシュ』
『……………姉上!?』
アッシュと交信中だったりした。
『な、何で姉上に…』
『何故かしらねぇ。解らないけれど、アッシュの声が聞けて嬉しいわ』
その声だけでも常の優しい微笑みが思い浮かんで、アッシュは思わず頬を緩ませる。
『ああ、俺も姉上と話せて嬉しい』
部屋に入ってどれ程の時間が経ったのか。
全員が物音を立てることさえ出来ずに固唾を飲んで彼(、)を見つめる中、
「………ん…」
微かな声と共にもぞもぞと身じろぎしたルーク(予測される中身、リスティアータ)は、ゆっくりと目を開けた。
そして未だに寝ぼけ眼をふよふよと彷徨わせ、ドアの前に勢揃いした皆に視線を向けると、ふんわりと柔らかく微笑む。
「あら、みんな、おはよう」
ビッシリと固まった皆に全く気づかずに朝の挨拶をしたルーク(予測される中身、リスティアータ)は、ふと感じた違和感にモジリと身を捩りながら寝具を引き寄せた。
「何だかお腹が寒いわ…」
──…
阿鼻叫喚誰か夢だと言って下さい。執筆 20081105
あとがき
Project投稿ネタ
「ルークと夢主が入れ替わり」
を基に書いてみました。
かなり思い切ってみましたが、如何でしたでしょうか?
正直、(色んな意味で)ダメージ絶大で(色んな意味で)限界だったので、これの続きは皆さんで各々ご想像下さいませ(__)
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