Metempsychosis
in Tales of the Abyss

交渉の前置き

「第七音素の超振動はキムラスカ・ランバルディア王国、王都方面から発生。マルクト帝国領土、タタル渓谷付近にて収束しました。超振動の発生源があなた方なら、不正に国境を越え、侵入してきた事になりますね」

ルークとティアを拘束後、タルタロスの一室に連行すると、ジェイドは淡々と情報を述べ、2人に拘束した理由を聞かせた。

しかし如何に正当な理由でも、拘束された事もその態度もジェイド自身も気にくわないルークは、ふんぞり返って鼻で嗤って見せる。

「へっ、ねちねちイヤミな奴だな」
「へへ〜、イヤミだって♪大佐♪」
「傷つきましたねぇ」

相手に届きもせずに流されてしまったが。

「ま、それはさておき。ティアが神託の盾騎士団だと言う事は聞きました。ではルーク、貴方のフルネームは?」
「ルーク・フォン・ファブレ。お前等が誘拐に失敗したルーク様だよ」
「「!」」
「キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵の御子息…という訳ですか」

変わらずふんぞり返って言ったルークに、イオンとアニスは各々なりの理由で驚いている。

イオンは純粋にルークの身分に驚いて。

アニスは、

「公爵……v 素敵ぃ……v」
「あら、アニスはお金持ちが好みなの?」
「もっちろんですよぅ、リスティアータ様v」

とかいう理由で。

体裁を繕う事すら無く、ハッキリバッサリ断言されたリスティアータは、にっこりと微笑みアニスの頭を撫でた。

「そう。頑張ってね、アニス。応援してるわ」
「はぁい、ありがとうございまぁす♪」

ルーク本人にとっては迷惑だろう激励をして脱線しまくりな2人を余所に、ジェイドはルークの言葉に訝し気に目を細める。

「何故マルクト帝国へ?それに誘拐などと……穏やかではありませんね」
「誘拐の事はともかく、今回の件は私の第七音素とルークの第七音素が超振動を引き起こしただけです。ファブレ公爵家によるマルクトへの敵対行動ではありません」

そう真摯に弁明するティアの横で、未だにふんぞり返って天井を至極つまらなそうに見ている(らしい)ルークに、リスティアータは内心で重い溜息が出るのを止められない。

きっと今、自分自身の措かれている状況など、何一つ解っていないのだろう。
いや、理解しようとしていないのか。

何にせよ、自分に関係ない、自分には何も責任がないとしか思っていないから、興味がないのだろう。
何故ティアがこんなにも必死に弁明しているのかも、何一つ。

自分が最悪殺されてもおかしくない状況だなんて、頭を掠めてすらいまい。

「大佐。ティアの言う通りでしょう。彼に敵意は感じません」

イオンの擁護に、ジェイドは眼鏡を押し上げて嘆息する。

「……まぁ、そのようですね。温室育ちのようですから、世界情勢には疎いようですし」
「けっ、バカにしやがって」
「ここは寧ろ、協力をお願いしませんか?」

呆れを含んだジェイドの同意に、ルークは益々機嫌を悪くしてしまったようだ。

そんなルークに苦笑してイオンが提案すると、ジェイドも同意見だったのだろう。
反対する事なくルーク達に話し始めた。

「我々は、マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下の勅命によって、キムラスカ王国へ向かっています」
「まさか、宣戦布告……?」
「宣戦布告って……戦争が始まるのか!?」

青ざめて言ったティアの言葉に、初めてルークが話に耳を傾けた。
自分からは遠かった言葉が、突然間近になったからだろう。

「逆ですよぅ、ルーク様ぁv 戦争を止める為に、私達が動いてるんです」
「アニス。不用意に喋ってはいけませんね」

いつも以上に念入りに可愛さを全面に押し出したアニスが言うと、ジェイドがすかさず注意する。
とは言え、口調に厳しさは欠片もなかったが。

「戦争を止める?……って言うか、そんなにヤバかったのか?キムラスカとマルクトの関係って」
「知らないのは貴方だけだと思うわ」
「……お前もイヤミだな」

しれっと答えたティアに、うっと詰まったルークは何とか言い返す。

「これからあなた方を解放します。軍事機密に関わる場所以外は、全て立ち入りを許可しましょう」
「「!」」
「まず私達を知って下さい。その上で信じられると思えたら、力を貸して欲しいのです。戦争を起こさせない(、、、、)為に」

今までに無く、真摯に言ったジェイドに、ルークは詳しい説明を求めたが、ジェイドは頑として頷かなかった。

説明してから嫌だと言われては取り返しもつかないし、ルークはもちろん、ティアとてただでは帰せなくなる。

しかし無理やりの協力では意味がないのだ。

全てはルークが自分の意志で決めて貰わなくては。

戦争を起こさせない(、、、、)為の和平交渉に協力すると。

待っていると言って部屋を出たイオンに続き、リスティアータは無言で部屋を出た。




再執筆 20080930

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