悲鳴轟く
------------------------…あたたかい、
仄かに深い睡眠から浮上した意識の中、それを感じて擦り寄った。
ぬくもりは自分を包み込むように、ふわりと抱き締めてくる。
------------------ …あんしん、する…
心地よいぬくもりに、緩やかに浮上していた意識が再び睡魔に誘われて、
------------------…もう少し…このまま……あぁ、でも…
------------------……もう、起きなくちゃ……
そう睡魔に背を向けて薄く目を開くも、飛び込んできた淡い光さえ眩しくて、ぎゅっと目を閉じた。
瞼の裏でチカチカする光の残像が消えるのを待って、もう一度ゆっくり目を開く。
「………………………………?」
寝起きでぼやけた視界が捉えたのは、健康的な肌の色だった。
ぺたりと触れてみれば温かく、微睡みの中で感じたのはこれだったのかとぼんやりと思ったところで、くすぐったかったのか目の前のそれがもぞりと身動ぎする。
その拍子に、色が視界を掠めた。
視界を埋めつくしていた肌の色以外の色に、自然と目は引き寄せられる。
その色は、
「………………………………、」
朱かった。
「………………〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
それを認識した瞬間のティアの行動は神速だった。
ぺたりと触れていた手を、そのまま前に押し出したのだ。
「ぐへぇ!!」
喉が詰まったような悲鳴が衝撃の強さを物語っている。
これぞ火事場の馬鹿力。
押し出されたそれは、ものの見事に吹っ飛んだ。
「イッテェ〜!!」
『!!?』
吹っ飛ばされたそれの悲鳴が大音量で轟き、全員がその悲鳴で飛び起きたのだが、当人……ティアは、それどころではなかった。
バックンバックンと激しい動悸を抑えようと心臓の上辺りに右手を添えて深呼吸。
それを繰り返すこと数十回。
先程から集まっていた気配に恐る恐る目を向ければ、
「〜〜〜っ!!」
冷たいだろう床で悶絶する『それ』…ルークと、
『………………』
状況が読み取れずに固まる皆と、
「あーあ」
呆れながらも面白そうに笑みを浮かべるカンタビレ、
そして、
「おやおや」
「あらまぁ」
片や相変わらずの薄ら笑いで、片や相変わらずののほほん笑顔で立つジェイドとリスティアータの姿があった。
執筆 20130525
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