Metempsychosis
in Tales of the Abyss

仲直りしましょ。

アルビオールを出て、人為的に造られた茂みを抜けた先に見えた大小ある姿に、リスティアータは自然と自身の表情が綻ぶのを感じた。

中央にいる桃色の髪の可愛らしい少女…アリエッタと、その後ろに控える立派な鬣のライガの姿。
アリエッタについては久しぶりに、ライガに至っては初めて目の当たりにする姿である。
(今日はフレスベルグは一緒ではないのか、その姿は見当たらない)

成長した様と元気な姿に喜びを感じずにはいられない。

と、

「………っ」

あと数歩といった距離まで近づいた所で、小さな肩がふるりと震えたのに気づいて歩みを止め、リスティアータは仄かに苦笑した。

思えば最後に顔を合わせたのはカイツール軍港。
別れ際に至っては、かなり強く突き放したのだ。

その時の発言を、ダアトを出て以来息つく間もない中で、余裕を、冷静さを、見失っていたのだと、目覚めた連絡船の中で1人反省(発言そのものを、ではなく、言葉選びを、という意味で)したりもしたが、今に至ってしまっては言い訳にしかならないだろう。

小さな震えを抑える様に、ぎゅっとぬいぐるみを両手で抱き締めるアリエッタがリスティアータを見つめる瞳に映すのは、困惑か、恐怖か、拒絶か、それともまた別の感情なのか……。
見ただけでは何とも判断しきれないが、もじもじとした様子に、目線を合わせるようにリスティアータは静かにその場に膝を着いた。

そうして待つ事数分、

「あの…リスティアータ、様…」
「何かしら?」
「リスティアータ様、は……っ」

か細く絞り出された声に、

「……リスティアータ様は、もう、アリエッタの事、嫌い、なのです……っ?」
「………え?」

思わずきょとりと瞬いた。

言った当人は一層強くぬいぐるみを抱き締めて尚抑えられないのかふるふると震えながらも、一心にリスティアータを見つめている。
そのへにゃりと八の字に垂れた眉は、まるで断罪されるのを待つかの様で……、

「あらあら」

それに気づいたリスティアータは、今も自分を好いてくれている事に喜び、その少女にその様な表情をさせている事に苦い思いが込み上げて、実に複雑に微笑した。

そんなリスティアータの表情を悪い方に受け取ったらしいアリエッタが今にも泣き出しそうに顔を歪める。

------…あぁ、違うのよ…、そんな顔をさせたいのではないの…。

そう思うのに、今のリスティアータが伝えられる言葉は多くない。

だから、

「アリエッタ」

心からの笑顔で、
『アリエッタが大好き』だという気持ちを込めて名前を呼んで、
『いらっしゃい』と誘うように両腕を広げた。

「リスティアータ、様…っ」

とん、と軽い音を立てて抱き付いて来た温かな塊を、慈しみを込めて抱き返す。

「ごめ、ん…なさ…、ごめ…っなさ…ぃっ」

カイツール軍港での事だろう、謝罪を繰り返すアリエッタに、衣服の肩口が湿ってゆく感覚に、リスティアータの苦い思いは更に深まった。

「私も、強く言い過ぎてしまったわ。ごめんなさいね、アリエッタ」
「違、う…違う、です…っ!」

柔らかな髪を撫でてやりながら自分の無責任を詫びれば、ぶんぶんと頭を振って、アリエッタはリスティアータに抱き付く力を強める。

「リスティアータ様、悪くないですっ!ア、アリエッタが、ちゃんと…考えてなかった、から…っ!リスティアータ様も…イオン様にも…っ、いっぱい…言われてたの、に…っ」

だから、ごめんなさいと、ぽろぽろ涙を流すアリエッタ。
その小さな温もりがいじらしくて、愛しくて、リスティアータは抱き締める力を強めた。




執筆 20111205




あとがき

フィエラがアリエッタを見たのは、イオンが亡くなり、彼女が『惑星預言』を視たあの時です。

フレスベルグは居ても良かったのですが、ダアトのイベントの時にはライガ×2のみで居なかったし、この時は別行動だったのかなぁと。

でも思い返せばストーリー内でフレスベルグと接した事ないんじゃね?とか後で気づきました。

が、もう書いちゃったから放置です!!(爆)

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