Metempsychosis
in Tales of the Abyss

やだやだ

第一音機関研究所を出た所で、ナタリアが振り返って頭を下げた。

「アッシュ…バチカルでは助けてくれてありがとう」
「そうだ。お前とカンタビレのお陰だよ。ここまで逃げて来られたのは」
「勘違いするな。導師に言われて、仕方なく助けてやっただけだ」
「イオン様が!?」

ルークの謝辞には「ふんっ」と顔を背けたアッシュは、早々に彼等に背を向ける。

「お前達に渡す物がある。宿まで来い」

そのまま一行を置いて歩き出そうとした、が。

「あら。同じ宿屋さんに行くのだもの、一緒に行ってもいいんじゃないかしら?」
「うっ」

ふんわりと優しくリスティアータに言われて、固まった。
確かにそうだ。
確かにそう、なのだが…と内心で思うアッシュは、チラリとナタリアを見て、ルークを見て、ぐわっと眉間に皺を寄せた。

「嫌だ」
「アッシュ」
「………嫌だ」
「あらあら」

リスティアータが駄々をこねる子供を見るかのように笑うのに、アッシュは無性にむず痒くなって、ずぅっっと繋いだままになっていたリスティアータの手を引いて歩き出す。
今度は何と言われようと止まらないだろうと思い、リスティアータもそれ以上言わず、ルーク達に手を振ってアッシュに続いたのだが、カンタビレ達の待つ宿屋に到着した頃になってふと思う。

「ルーク達にどの宿屋さんか伝えるのを忘れてしまったわねぇ」

のほほんと言うリスティアータに、今更ながらにハッとするアッシュ。
とは言え、わざわざ引き返して「この宿屋だぞ」なんて伝えるのは、物凄く間抜けな気がする。
と言うか、間抜け以外の何ものでもないだろう。

「…………………この街に宿屋は数える程しかない。わざわざ教えなくても問題ないと思う………多分」
「あら、そうだったわね。でも、ロビーで待っていた方がいいかしらね?お部屋で待っていて擦れ違いになっては大変だもの」

そうして戻った宿屋でカンタビレとノエルと共に待つこと暫し。

「ノエル!無事だったのか!」
「はい。アッシュさんに助けて頂きました」
「アッシュに…?」
「良かったですの!」

無事リスティアータ達の泊まる宿屋に着いたルーク達は、身を案じていたノエルとの再会を喜んだ。

「ただ、アルビオールの飛行機能は、ダアトで封じられてしましました」
「どういう事なの?飛べないのなら、どうやってここに…」
「水上走行は可能だったので、それで何とか」

申し訳なさそうに説明するノエルに、いち早く理由を理解したガイがそうか、と眉を顰める。

「多分浮遊機関を操作している飛行譜石を取り外されたんだな」
「じゃあそれを探さないと飛べないのか」
「ああ。現状では船と変わらないって事さ」

仕方がないと笑って、ガイはそれでも移動手段が残っているだけ儲けものだと肩を竦めた。

話が一段落した所で、アッシュがイオンから預かった禁書をジェイドに渡す。

「イオンからこれを渡すように頼まれた」

受け取ったジェイドの目が真っ先に認めたのは、表紙に刻まれた『禁書』という烙印だった。

「これは創世暦時代の歴史書…。ローレライ教団の禁書です」
「禁書って、教団が有害指定して回収しちゃった本ですよね」
「ええ、それもかなり古い物だ」
「あんたに渡せば、外殻大地降下の手助けになると言っていた」

タイトルと著者を見て、ペラペラと数ページ捲って考え込むように沈黙する事数秒。
僅かに目を細めたジェイドは、ふむ、と一人頷いた。

「読み込むのに時間が掛かります。話は明日でもいいですか?」
「いいんじゃないか?この中でその本を理解出来そうなのはジェイドくらいだし」
「頼むよ、ジェイド」
「では、また明日の朝」

元より反対する理由はないとルーク達が快諾すると、ジェイドはパタンと本を閉じるなり、宿屋の受付に一人部屋を手配してさっさと立ち去る。
その間、僅か15秒足らず。

「………早っ!」

あまりの迅速さに誰もが呆気に取られていた中で、アニスのツッコミが虚しく響いた。




執筆 20110702




あとがき

難産でした。
何がって?
甘えたアッシュくんがですよ!
久し振りに会えた大好きで大好きでだぁぁぁい好きなお姉様と一緒に行動出来るのが嬉しいのか、ここ数話に渡ってなかなか離してくれませぬ。
書きながらゆにしあ自身が思ってました。

誰だお前。

全く、いつからこんなお姉ちゃん超大好きっ子になったのか…(おい)
やれやれです…(* ´Д`*)=3

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