自分達に出来る事
到着したユリアシティでは、テオドーロが待ち受けていた。
やはりセントビナーの崩落を無視できなかったらしく、アクゼリュスの時とは違い、セントビナーの住民達を快く受け入れると、ルーク達を連れて会議室へと移動する。
「単刀直入に伺います。セントビナーを救う方法はありませんか」
早速本題を訊いたルークに、テオドーロは厳しい顔で首を振った。
「難しいですな。ユリアが使ったと言われるローレライの鍵があれば或いは……とも思いますが」
「ローレライの鍵?」
ルークが首を傾げると、ジェイドが説明する。
ローレライの鍵とは、ローレライの剣と宝珠の事を言い、プラネットストームを発生させる時に使ったとされているものだ。
また、ユリアがローレライと契約した証であり、ローレライの力を借りて作った譜術武器と言われている。
鍵は第七音素で構成されているともされている。
ローレライの剣は第七音素を結集させ、ローレライの宝珠は第七音素を拡散する力があると言う。
ユリアは鍵にローレライそのものを宿し、ローレライの力を自在に操ったとも言われているが、そこまでの力があったかの真偽の程は確かでなく、確かなのは、セフィロトを自在に操る力はあった事。
しかし、そのローレライの鍵はプラネットストームを発生させた後、地核に沈めてしまったと伝わっているという。
結局の所、セントビナーを救う手段としては却下となった。
「何より、一度崩落した以上、セントビナーを外殻大地まで再浮上させるのは無理だと思います」
「う〜ん。どうしようもないのかなぁ」
「…いえ、液状化した大地に飲み込まれない程度なら、或いは…」
「方法があるんですか!?」
テオドーロの言う方法とはこうだ。
セフィロトを制御しているパッセージリングという装置を操作して、セフィロトツリーを復活させる事が出来れば、大地を浮かせられる可能性があると。
しかし、解らない事がひとつ。
ヴァンがどうやってパッセージリングを操作したのか、という点だ。
だが、そればかりはテオドーロにも解らないと言われれば、手がかりもない今考える事ではない。
「パッセージリングの操作はどうすればいいんですか?」
「第七音素が必要だと聞いています。全ての操作盤が、第七音素を使わないと動かない」
「それなら俺達の仲間には4人も使い手がいるじゃないか」
「あとは、ヴァンがパッセージリングに余計な事をしていなければ…」
「そればかりは行ってみないと分からないわ…」
見えてきた唯一の希望を胸に、ルーク達はセントビナーの東にあるというシュレーの丘に向かった。
暫くしてシュレーの丘に到着した一行。
モンスターもいるからと、各々が装備を確認していると、
「私達、お留守番していようかと思うのだけど」
と、リスティアータがまたしてもそんな事を言い出した。
もう何度目かも知れないので、そろそろルーク達も馴れてきた。
しかもリスティアータが『私達』と言ったという事は、とそちらを見れば、欠伸をかみ殺して見るからに行く気がなさそ―なカンタビレが。
「あ―、うん、分かった」
「みんな、気をつけてね。いってらっしゃい」
苦笑いのルークが頷けば、リスティアータはふんわり笑顔で一行を送り出した。
そうしてルーク達の姿が完全に見えなくなって暫くすると、カンタビレが徐に席を立つ。
「ノエル」
「はい」
「あたしは暫く外にいるから、何かあったら呼びな」
「え?」
かと思えば突然そう言われ、ノエルは戸惑ってしまう。
何か目的があって別行動をするのかと思ったのだが、
「外でちょっと暇つぶしをして来るだけさ。出入口の近くにいるからね」
「あ、はい…」
そう言われてしまえば、それ以上訊くことも憚られ、ノエルは頷いた。
「いってらっしゃい、カンタビレ。無理をしないでね」
「はい、リスティアータ様」
普通に送り出すリスティアータは何か知っているのだろうが、と思っていたノエルがルーク達に掛けた言葉との僅かな違いに気づく事はなく、
「ノエルさん」
「あ、私は呼び捨てで構いませんから」
「あら、そう?では、ノエル、お茶にしましょう?」
「お茶、ですか?」
「ただ待っているのも暇だものねぇ」
そんなリスティアータに流されて、カンタビレが戻って来るまでの間、ノエルは時間を忘れてリスティアータとまったりと過ごしたのだった。
執筆 20110212
あとがき
ユリアシティではリスティアータとカンタビレが空気(笑)
ちゃんと一緒にいますよ。
ただ、話に混ざる余地がなかったというか、セリフをぶち込む必要がなかったというか…。
まぁ、なんかそんな感じです(笑)
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