Metempsychosis
in Tales of the Abyss

浮遊機関を求めて

ルーク達一行は、タルタロスでシェリダンに辿り着いた。

ベルケンドとは違い、一見して遊びのような音機関に溢れた町に、物珍しそうに当たりを見回しつつも、急いで飛行実験をしている場所、もしくは責任者を捜そうという雰囲気の中で、明らかに場違いな男が1人、

「おぉぉぉお!」

言わずもがな、偏執狂ガイである。

少年と見紛うキラキラした目と言えば聞こえは良いが、場違い極まりないリアクションに、最初こそ微笑ましくみていた面々だったが、それも長らく続けば呆れに変わり、アニスはあからさまに引いている。

「まぁ…玩具箱の中みたいねぇ」
「そうだろう!?」

そんな中で、きょろきょろと辺りを見回していたリスティアータのささやかな呟きを、ガイは聞き逃す事なく、始まった。

やれ、あの音機関はここの部品がどうでああで、
やれ、こっちはここが変わっていてどうだなんだと。

まくし立てるように嬉々として話すガイに、リスティアータはポカンとし、カンタビレと男性陣は呆れ、残りの女性陣はドン引く。

そうして、

「ガイ…キモ―イ…」
「……………」

最早それ以上言葉もないとばかりのアニスの呟きが、あっさりとガイを黙らせたのだった。



偏執狂を黙らせた一行がシェリダン内を捜索していると、一目見て深刻な様子と分かる老人が3人集まっているのを見かけ、何事かと近寄る。

「どうじゃった!?んん?どうじゃったんじゃい!」
「間違いない!メジオラ突風に巻き込まれて、今にも落ちそうじゃ」
「いやだよ、アストン。あんた、老眼だろう?見間違いじゃないのかい?」
「老眼は遠くの方がよう見える事はわかっとろーが、タマラ」

そんなやり取りに、深刻なのは雰囲気だけかと、ルークが踵を返そうとした、その時、

「マズイの。このままでは浮遊機関もぱぁじゃ」

今まさに探し求めていた単語が飛び出した。

「何を言うんだい、イエモン!アルビオールに閉じ込められてるのはあんたの孫のギンジだろう!心配じゃないってのかい!」

ドスッと、3人の老人の中で唯一の女性、タマラが怒りも露わに持っていた棒で、イエモンと呼ばれていた老人の脇腹を突く。

「何かあったんですか?」

声もなく悶絶するイエモンに、うわ、痛そう、と思いつつも、ルークが声を掛けると、未だ痛がりながらもイエモンが答えてくれた。

「アルビオールがメジオラ高原に墜落したんじゃ」
「アルビオールって、古代の浮遊機関を積んだ、あれか!」
「あちゃー。じゃあ無駄足だったって事?」
「いや、確か浮遊機関は2つ発掘されたって聞いてるが……」
「よく知っとるな。じゃが第二浮遊機関はまだ起動すらしとらんのじゃ」

音機関に限り情報通のガイの言葉にイエモンが感心していると、もう一人の老人、アストンがイエモンを急かす。

しかし、その会話に話にあった孫の心配の言葉は無く、タマラが「何て薄情なジジイだい!」と怒鳴った。

そんな会話をやいやい交わしながら、世間話は終わりとばかりのイエモン達を見送って、ルーク達は顔を見合わせる。

ジェイドが言うに、メジオラ高原は魔物の巣窟。
そんな所へ向かうなら救助隊は当てにならないが、イエモン達の話ではすぐに使える浮遊機関はそれだけ。

八方塞がりと思われる状況だったが、とりあえずは浮遊機関を借りられないかを相談する事にして、ルーク達は再びイエモン達に会いに向かった。



イエモン達は集会所にいた。

現れたルーク達が浮遊機関を必要としている経緯を説明する。

それを聞いた彼らは驚きながらも、理解を示してくれたのだが、そのイエモン達の事情は思わしくない方に進んでいた。

今はタイミング悪くも兵は出払っており、救助隊を派遣出来ないでいると。

「だったら俺が行くっ!」
「よく言いましたわ、ルーク!それでこそ王家の蒼き血が流れる者ですわ!」

思わずついて出た言葉をナタリアが褒めると、ルークはそれを否定した。

思いの外強くなった語調にナタリアが驚けば、ルークは頬を掻きながら言う。

「ただ俺は…出来る事をやらなきゃって。大体、人を助けるのによ、王家とか貴族とか、そんなん、どうでもいいかな…とか…。そ、それだけだよっ!」

その言葉に覗くのは、単純な照れなのか、それとも、「王家の血」など流れていないという事への卑屈さなのか。

それはルーク自身でさえ分かっていないのだろうと、リスティアータは静かに思う。

ルークの様子に気づいているのか、ティアが話を進めれば、二号機に足りない部品をタルタロスで補ってもらうという事になった。

「イオン様とリスティアータ様はここに残ってタルタロスの案内をお願い出来ますか?」

浮遊機関を回収する間に二号機を完成させて欲しいからとジェイドが言えば、イオンは快く受け入れる。

と、

「あたしも残らせてもらうよ。タルタロスまでの行き来で何もないとは限らないからね」

カンタビレがそんな事を言い出した。

「は?」
「いいでしょう」
「はぁあ!?」

ジェイドもあっさり頷いた。
因みにジェイドの前後はルークである。

「ちょっ、ジェイド」
「何です?」
「いいのかよ」
「大丈夫でしょう。ここに来るまででも戦力は十分足りてますし。それに、カンタビレの言った事も必要とは考えてましたから」
「あー、なるほどな」

ジェイドのあっさり過ぎる説明にルークが頭に「?」に浮かべると、ガイが納得したように頷いた。

「リスティアータとイオンにイエモンさん達だけで、魔物に襲われたら大変だって事さ」

それを聞き、皆が納得したのは言うまでもないだろう。




執筆 20110206

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