オズボーン知事
「…お兄さん!?」
知事邸宅について早々案内された先にいた知的な美女の口から出た単語に、ルーク達の思考が完全に止まった。
「………お兄さん!?え!?マジ!?」
「あら、知的な所がそっくりねぇ」
驚くルーク達と微笑むリスティアータを置いて、ジェイドはにっこり妹であり知事である女性に挨拶をする。
「やぁ、ネフリー。久しぶりですね。貴女の結婚式以来ですか?」
「お兄さん!どうなっているの!?アクゼリュスで亡くなったって…」
「実はですねぇ…」
死んだと言われていたジェイドの突然の登場に狼狽える女性・ネフリーに、ジェイドは事情を説明した。
「…何だか途方もない話だけれど、無事で何よりだわ」
最初こそ信じられない様子だったネフリーだが、全てを話し終わる頃には否が応でも信じるしかなくなっていた。
とは言え、それで納得出来る辺り、随分と頭の良い人物なのだろうと知れる。
「アクゼリュスの難民も、こちらで受け入れます。念の為タルタロスを点検させるから、補給が済み次第、ピオニー陛下にお会いしてね。とても心配しておられたわ」
「おや、私は死んだと思われているのでは」
白々しく肩を竦めたジェイドにネフリーは呆れたように嘆息した。
「お兄さんが生きていると信じていたのはピオニー様だけよ」
それを聞けば、ピオニー陛下がどれだけジェイドを信頼しているのかが解る。
先程の白々しいジェイドの態度も照れ隠しに見えて、リスティアータは一人微笑んだ。
「皆さんも、出発の準備が出来るまで暫くお待ち下さい。この街は観光の街ですから、危険はないと思いますわ。ホテルに部屋をお取りしておきます。ゆっくりお休み下さい」
ネフリーの言葉を受け、ルーク達は肩の荷が降りた気持ちでホテルへと向かった。
「知事から承っています。ごゆっくりどうぞ」
ケテルブルク自慢のホテルに見合う丁寧な態度で受付の女性がお辞儀をする。
と、
「あ、俺ネフリーさんトコに忘れ物した。行ってくる」
いきなり突然棒読みにも程がある声音で思い出したように言うなり、ルークが直角に踵を返した。
あまりにも不自然極まった様子に、ジェイドの眼鏡がキラリと光る。
「俺も行こうか?」
「ネフリーさん、女だぞ」
意地悪く笑ったルークに、ガイは胸を張って答えた。
「美人を見るのは好きだ」
ガイとしては冗談に答えただけで、深い意味もなかったのだが、それは思わぬ波紋を呼ぶ。
「ガイも男性ですものね…」
ナタリアは何故か本気でしみじみと呟き、
「年上の人妻だよ〜?」
アニスはじとりと胡乱な目を向けた。
勿論こちらはからかい半分で。
「や、違うぞ!変な意味じゃなくて…」
「ご主人様、ボクも行くですの」
狼狽えて言い訳をするガイにぴょこぴょこ跳ねながら付いて来たがるミュウまで加わり、最早事態の収拾がつかなくなる。
「あーもう、うぜぇって!俺一人でいいよ!」
と、内心早く行かなきゃと気が急いていたルークが早々に限界を迎え、ミュウの頭を鷲掴みにして駆け出した。
「気をつけていってらっしゃいね」
「おう!」
未だに賑やかなアニス達をよそに、リスティアータはひらひらと手を振ってルークを見送った。
執筆 20090517
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